サピックスのテキストの管理、親御さんが全部やっているお家が多いですね。
でもそれ、おかしくないですか? 小学校高学年ですよ?
それくらい自分でやれなくてどうするんだろう。
今回は「テキストは子供に整理させたほうが学力にプラス」というお話です。
1)テキスト管理を親がするサピックスの違和感
サピで中下位の子を教えていると、共通の違和感があります。
それは「子供は座ってるだけ」という点。
すべてのお膳立てを(主に)母親がし、口を出し、子供は出された問題解くだけ。
トップアスリートに大人が何人もついてお世話してるのにそっくり。
サピックスが分冊タイプにした当時は、御三家オンリーの塾だったからそれでも良かったのかもしれません。御三家に行く実力のある子たちなら、プリント整理くらい自分でできたでしょうから。実際、担当の生徒のうち上位に行くにしたがってこれらを親任せにはしていません。
サピが拡大路線に転じ、中下位の学力の小学生たちを取り込み始めたときに、このやり方は変えるべきだったと思う。
その結果、中学受験はもはやオリンピック競技がごとくになってしまった。何度も書いてますが、オリンピックや芸術のトップ層でコーチが何人も着き、選手は言われたメニューをこなすだけ、なのはいいんです。それは「技そのもの」を競っている&「メダルを取ることがゴール」だから。
でも、「〇〇中学合格」って金メダルでもなんでもないですよ?きれいごとでもなんでもなく「入ってから」の方が100倍重要。乳母日傘&二人羽織で合格することの意味とは。この話は長くなるので別記事にします。
話を戻して。
プリント整理が親の仕事になっていることの弊害は以下の通り。
2)プリント整理もできない生徒は、内容を覚えていられない
こちらの記事にも書きましたが、上位の子になればなるほどプリント整理を親任せにしていません。
mikoto2020.hatenablog.com
さすがに小学生ですから整理ボックス作りなどは親御さんが段取りしてあげているようですが、そのあとは自分でテキストを整理しています。だいたい授業で「消化」してきちゃうので後からテキスト引っ張り出すこともそう多くはないのですが、必要なときには自分で探せます。
テキスト整理を自分でしようともしない生徒は、整理能力がないか、あっぷあっぷでそこまで手が回らないかのどちらかですが、いずれにしてもそういう状態だと「見かけ上は一応こなしているけど、先週やったことも忘れてしまっている」ことが多い。
3)「段取り」をする力が身につかない
そもそも勉強は何のためにするのでしょうか。
勉強そのものが面白く、将来は研究者になりたいというケースでなければ、「社会で生きていく力」を身につけるためではないのでしょうか。
生きていくうえで「段取りする力」は必須です。
仕事のできる人=段取りがうまい人、と言っても支障はないでしょう。
親がプリントを管理し学習計画を立てる、というのをやりすぎると子供は「出されたものを食べるだけ」になりモノを考えなくなりますが、本末転倒ではないでしょうか。
4)俯瞰できない
過去記事にも書いたように、サピックスは「自分が必要な総量のうちどこまで進んでいるか」「今やっていることは全体のどの位置づけなのか」がわかりにくいシステムです。その目的は「目先のことだけに集中させるため」だと理解しています。
テキストの7~8割は授業で理解してこられる子だと、そのように断片的に教えられても、自分の中で「それらが繋がる」タイミングがあります。
一方、テキストの半分以上理解してこられない子は、「土台が断片的なまま」進んでいくことになります。自分に何が足りないのか、山の何合目を登っているのかもわからないまま山を登り続けていくのはしんどいことですし、なかなか達成感が得られないのではないでしょうか。
5)子供が「勉強してやってる」につながりがち
すべて親がお膳立てしているお宅に伺うと、子供が
・不機嫌さを露わにし、親に機嫌を取らせている
・「(テキストが)ない!」「水!」「ノート!」と、親に小間使いのごとく命令する
・親に「何やればいいの?」と(不貞腐れながら)尋ねる
などなど、信じられない光景を見ることが多いです。
自分がやりたいと言って始めたことなのに、なぜ「やってやってる」という態度になるのか、私にはまったく理解できません。
こういう子は、自分が受験をやめたら親が困るとわかっているので、まさにやりたい放題です。講師という他人がいても親にキレまくったり、不貞腐れた態度を取ったりしますが恥ずかしくないのかな。まあ、親が足元見られてるんですよね。だからますますご機嫌取るようになっちゃう。
こんな甘ったれた子供のご機嫌を取って「お勉強していただかなきゃ」ならない親の弱みは何に起因するんでしょうね。見栄?不安?
根本的に何か間違っている気がしてなりません。
蛇足ながら、サピのサポートとしての個別や家庭教師が「ご機嫌取り」をしてしまって子供の「勘違い」を増長させるケースも多々あります。再々言ってますが「仕事に困ってない講師を選べ」というのはこれが理由です。私はこういう子には「ご機嫌取りは私の仕事じゃないんで」とはっきり言っています。すると、途端に真剣になりますよ。要は、ご機嫌取りする親は子供から舐めきられているという事実。これを認めたほうがいいと思います。
6)親の不安が煽られがち
あくまでも皮膚感覚的なものですが、サピックスが台頭してくるまで、中学受験ってもう少し「やる者はやる、やらない者はやらない」世界だった記憶があります。'80年代に家庭教師までつけるお宅は富裕層で教育熱心ではありましたが「細かい勉強の中身」には口出ししていませんでした。
昔の親御さんは、細かい内容は塾&家庭教師にお任せで、「大枠」つまり勉強に対する姿勢や、日々の生活の態度など、そういう点を厳しく躾けられていました。
それが、今や「親も塾のテキストに目を通し、あらかじめ解いておくこと」がアタリマエになってきています。当の子供は寝っ転がってスマホいじったりしてる横で、親だけが躍起になってテキストとにらめっこ。
これ、おかしくないですか(苦笑)。
サピは親にテキスト整理をさせますし、学習計画も立てさせるようですから、自然と親が中学受験勉強に「詳しくなっちゃう」んですよね。
これ、すごくまずいと思います。
超難関校はともかく、ぶっちゃけ上位校中堅校の入試問題なら、たいていの親は解けてしまうでしょう。すると、「こんな問題もわからないなんて」となるわけです。あるいは、その程度なら自分にもまだ解けますから、親が楽しくなっちゃうんです。そりゃあ、20歳下との競争なら勝てますよ(苦笑)。そんなに競争したいなら、自分が大人として資格試験や大学入試に再挑戦すればいいのにね。「勝てるゲーム」は楽しいよね、そりゃあ。
結果、どこもかしこも「二人羽織」の親子だらけになってしまう。
長い目で見ると、本当はそこで手を出さず成長を待つのが良いのですが、「よその子が二人羽織」なのを見ると「ウチの子だけ損させてたまるもんか」となっちゃうみたいですね。
個人の見解ですが、12歳になってまで乳母日傘&二人羽織がアタリマエで、親にあれこれ「命令」して自分は出された問題解くだけで「なんとか」志望校に滑り込んだ子が、自律&自立できるとは思えませんね。
7)テキスト整理は本人にさせるべし
学校の時間割を、まだ親がそろえてますか?
してませんよね?
だったら塾のテキストも同じですよ。
やる子はやってます。
嫌らしい言い方になりますが、テキストが分冊になってない塾、たとえば四谷大塚や日能研の子たちは、当然のように自分でそろえてますよ?たしかに、四谷大塚や日能研でも、幼い子は親に向かって「ねえ、あれ(テキスト)は?」とかふざけた口をきいてますが、親御さんが「自分で探しなさい!」で終わりです(笑)。
1)~5)に書いた弊害を防ぐだけでなく、テキストを自分で整理・管理することはプラスが大きいんですよ。
棚づくり、ボックスづくりという大枠だけ作って一度本人に整理させてみてください。
家の大掃除や断捨離を想像すれば、その効果をわかっていただけると思います。
人間は「捨てる」となると「一応中身を見ます」。
子供が「自分で」それをする間に、これまで学んできたことが俯瞰出来たり、再定着したり、はたまた「そういやこれ苦手だったよな」と自分の問題点を再認識したりするんです。
その程度の時間も余裕もないのだとしたら、今目指しているところがキャパオーバーということです。
「テキスト整理は子供自身にさせてください」と言って受け入れる中下位の親御さんはほとんどいらっしゃいませんが(苦笑)、やってみたご家庭では、成績・生活態度ともに、軒並み良い結果が出ていますよ。