とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

筆算をやめよう(1)

思考力を鍛えたければいますぐ筆算をやめるべし。

暗算王に俺はなる!という意味ではありません(笑)。

紙と鉛筆は使っていい。
でも、筆算はやめよう。
なんじゃそりゃ!?

なぜかと言うと、筆算って結局
「一けた同士の足し算」
「一けた同士の掛け算」
をやってるだけで頭をまったく使っていないからです。

小学生に「すぐ筆算をするクセ」をつけさせてしまうと
量を「イメージ」できなくなります。

289+785=974

こういうミスをしたとき、親御さんも学校の先生も
「だから筆算しろっていったじゃない!」
「繰り上がりに気を付けて!」
と叱ります。
でも、問題の根っこはそんなところじゃないんです。

筆算の一番悪い点は、「大きなケタほど間違いやすい」ところなんです。
一の位を間違える子はほとんどいません。
でも、この計算問題を見て即座に「ああ、答えは1000を超えるな」という感覚のほうがよほど大事なんです。

国の予算でも、家を建てるのに必要なコンクリートの量でも、なんでも。
一番大事なのは「ざくっとした総量」「一番大きな桁の数」です。

でも、テストの点数で一喜一憂する親御さんは、とにかくミスが嫌いだから筆算!となる。筆算に慣れ切った生徒は、上の例のような重大なミスをしても「計算ミスだから」と片づけます。

 

余談ですが、子供が「花子さんは1500円持って出かけました。590円の本を買いました。今いくら持っていますか」という問題に「1010円」と答えた場合、ほとんどの親御さんが「ありえないってなんで気づかないの!」とおっしゃいます。でもそれは、筆算の弊害で「考えない計算のクセ」がついてしまっているからなのです。

 

さて上記の足し算の場合、思考する生徒は、
「答えはだいたい1100だよな」
「あ、800足して15を引けばいいな」
と考えます。

単なる「計算の工夫」ではありません。
総量をイメージすることが何より大事なのです。
筆算はそれを阻害します。

わが子や生徒の思考力を育てたければ、目先の5点10点は気にせずに筆算をやめさせましょう。