とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

筆算をやめよう(2)

思考力を鍛えるにはいますぐ筆算をやめるべし。

算数では「とにかくスピード命」で、文章題でも思考せずにすぐ計算を始める生徒が実に多いです。
私は、それもいったんやめさせています。
必ず「予測」をさせたうえで、「じゃあ計算していいよ」と指導しています。

筆算は「すべて一けた同士の計算で、思考力を奪う」という話は前回書きました。

そもそも、筆算の「お作法」が、ちょっとおかしい気がしています。
繰り上がりを「小さな数字」で書かせますよね。
あれっておかしくないですか?
小学生はそれほど器用ではありませんから、繰り上がりの「メモ数字」を勘違いして再計算してしまったりします。
もしどうしても筆算したいなら、

  59
× 17
―――――
  63
 35
 59
―――――
 203
 8
―――――
1003

のようにわけて書いたほうが確実にミスが減らせると思うんですが、なぜ全国の小学校では筆算の「お作法」が決まってるんですかね。ミスを減らすための筆算でミス誘発してたら本末転倒ですよね。

ところで、上の計算も、思考力を鍛えるためには筆算しないほうがいいです。
その場合、方法は2つあります。

 

1)「メモ」方式

59×17=590+350+63
     =940+63
     =1003
のように、メモしながら答えを出す。
筆算と似ているようで全然違うのは、この方式の場合「5×7=35」ではなく「50×7=350」と、数を「カタマリとして意識できている」点が良いです。

 

2)「計算の工夫方式」

59×17(=60×17-17)
     (=1020-17)
      =1013

思考する子だと、( )の中は書きません。
算数の勉強時間のうち文章題でもおそらく半分近くは計算にとられていると思います。
計算に費やす時間を単なる作業時間にするか、思考力を鍛える時間にするか。
一見同じ時間勉強しているように見えて差がついていってしまうのは、実はこういう部分なのです。
ちょっと怖いですよね。