とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

良いコーチは「聞き上手」

教師や講師になろうなんて人は、自分も含めてほとんどが「しゃべりたい」「教えたい」人間だと思います(笑)。
だからこそ、自戒の意味で、この記事を書きます。

 

 

1)子供はみずから発信することで成長する

子供は、常に「黙って大人の言うことを聞く」ことを要求されます。
学校でも、家でも、塾でも、そして家庭教師相手にも。
もちろん、未知のことはまず人の話を聞かないことには始まりません。
でも、既知のことについて考えを深めるときには、むしろ発信したほうが良いのです。


「話しているうちに考えがまとまってきた」
「話しているうちに自分でも気づかなかった自分の思いに気づいた」
というのは、誰しも経験があると思います。

 

特に、国語を伸ばすには、これです。
国語は伸ばしにくい、とよく言いますが、それははっきり言うと教え方が下手なんだと思います。
国語の授業と言うのは、ほとんどが講師の解説に終始するんじゃないでしょうか?
でも、「国語のできない子」が、解説を聞くだけで「できる」ようになるでしょうか
解説を聞けば、そのときは「わかった気」になるでしょうけれども。
国語の授業こそ、たとえ拙くとも子供に発信させ、講師はそれにツッコミを入れつつ辛抱強く聞き、ディスカッションに発展させていく必要があるのだと思います。
子供は、話しているうちに「あれ?なんか自分の意見、破綻しているかも」「あれ?ここがわからない」ということを「発見」していきます。

だいいち、子供に発信させないと「どこにつまずいているのか」はわかりません。

 

算数でもそうです。
算数もまた、「講師が華麗な解き方を披露して気持ちよくなるが、それだけ」になるリスクの大きい科目です(笑)。


間違えたとき「そうじゃないよ、こうだよ」で子供の発想を封じ続けていると、いずれ子供は「やり方を教えてもらうまで自分からは解こうとしない子」になってしまいます。間違えていたら「どうしてそう考えたの?」と尋ね、拙くとも自分の言葉で説明させる。
その過程で、本当に子供は成長します。

 

理科も、話させる、「なぜ?」と疑問を持たせることが何より大事な科目ですよね。
その意味で、今の中学受験における理科の教え方ははなはだ疑問ですし、むしろ悪影響だと思っていますがこの話は長くなるのでまた別で。

 

2)そもそも、子供は「聞いて」なんかいない(笑)

 

世の中には天性の聞き上手という方もいらっしゃいますから、全部が全部というわけではありませんが、でも大抵の人は「自分が話す」ほうが気持ちいいんじゃないですかね?そうでなきゃ、一億総ブロガーとか一億総SNSに夢中、なんていう現象は説明がつきません(笑)。


でも、実生活ではそうもいきません。井戸端会議でいつも自分の話ばかりしていると、まあ間違いなく陰口をたたかれる羽目になります(笑)。

だから、話したがりの人にとっては、教師って最高なんじゃないかな。
何しろ、「黙って私の話を聞け」が合法的に許される職業なんだから(笑)。

 

でも、思い出してください。
朝礼での、校長先生の長い話、最初から最後まで真剣に聞いていた記憶、あります?
そう、大人はあれもこれも話したがり、そして話した以上相手は聞いていると思い込んでいますが、実は子供は聞いちゃいません(笑)。(よほど先生が話し上手であれば別ですが)

会議でも朝礼でも授業でも、相手を受け身にしている以上、相手は会話に参加していません。
でも、相手に質問して、相手に語らせれば、主体的に参加せざるを得ません。
話す以上、「考える」ことになります。
それが、子供の成長と思考を促すことになるわけです。

 

3)子供は話を聞いてもらえると自信を持つ

 

学校では黙って先生の話を聞け、と言われ。
家では自分の意見を言えば(主に母親から)10倍になって返ってくる(笑)。
あきれたことに、塾ですら「先生が解説をしている間は、手を机の上に出して黙って聞け」という塾すらあるそうですが、メモをとれない子供が増えたのはこの辺が原因じゃないだろうか。

これでは、勉強に対して受け身になるばかりです。


子供同士ではしゃべってるからいい、ということではありません。
子供にとって「大人が自分の話を聞いてくれた」という経験は、ものすごく自信になるわけです。
自分の考えに自信が持てれば、勉強だけじゃなく生活すべてが積極的になりますし、試行錯誤してみるようになります。

騙されたと思って、お母さんが「指示」したいことの2回に1回は、先に答えを教えず「どう思う?」と聞いてみてください、子供は必ず変わります。

 

4)「子供の話を聞くかどうか」で講師を選べ

 

あなたのお子さんが、精神的に成熟していて、学業も特に心配ないならば「マシンガン解説講師」でも構いません。
実際、高校生向けの予備校というのは極めて一方的な授業なわけですからね。

 

でも
・精神的にまだまだ成長過程の小中学生
・「聞いただけ」ではわからない子
の場合、ぜひとも「聞き上手」なコーチを選びましょう!

マシンガン講師だと、親が期待するほどには、彼らの「解説」は子供に入っていきません。ひいては「あれだけ授業していただいているのになぜ成績が伸びないのかしら?」となってしまいます。

 

講師が「聞き上手」「語らせ上手」かは、比較的容易に初回の顔合わせでわかります。


・現在何に困っているか、「子供に」質問するかどうか
・「子供に」好きなことを質問するかどうか
・「子供に」志望校について質問するかどうか
を見れば良いです。

これらのことをまず親に聞く講師は、「親を向いて」授業をする講師です。

 

ただ、ここで要注意。
形の上では質問するが、すぐ話を引き取って「そうか~実は先生も~」と話し出したり、「だったらこうすればいい!」とすぐアドバイスしてしまう人。
残念ながら、こういう人は「聞かない人」です。


いますよね?身近にもそういう人。ちょっと愚痴ると「わかるわかる~!実は私もね(以下エンドレス自分の話)」って話を引き取っちゃう人(笑)。

そうではなくて、子供のまとまりのつかない話に早急に結論付けず、耳を傾ける講師は、子供の成長を引き出せる講師だといえると思います。

 

私自身は、本来は口から先に生まれたような人間ですが(笑)、授業ではいつもこれを戒めとし、「先に教えすぎない」ように心がけています。その結果、子供たちが見違えて成長し、結果としてテストの点もぐんぐん伸びるのを見るたびに、これを自戒としていてよかった。。。と思う日々です(笑)。