とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

数学の勉強法(1)~焦り気味の高2生の場合

ひと口に「数学の勉強の仕方」と言っても、各々の置かれた状況・志望校・学習レベルによって千差万別です。

ここでは、ケーススタディとして

中学までは数学なんて勉強しなくても満点取れたのに高校に入っていきなりわからなくなりそのまま「なんとかなるだろ」と放置、高2の秋ごろになってまさかの「すべてE判定」が出て焦っている、しかし志望校は東大

という極めて特殊な例(笑)でおすすめ参考書を考えてみます。

ちなみにこの特殊な例は現役時代の私です(笑)。

なお、志望校はもちろん東大でなくても構いません

途中まではほぼ一緒です。

 

 

 

1)急がば回れ、まずは基礎から

 

高校数学で、初めて「教師の言っている単語がそもそもわからない」という現象を体験しました。名だたる進学校に首席入学したのが嘘のように真っ逆さまに最下位へ(笑)。でもプライドが邪魔してそのあと2年間遊び続けた私。。。

まさかのE判定にビビってゼロからやり直しました。

基本は教科書。

そして言わずと知れた「青チャート」。

でも、いまならば「まずは黄チャート」でいいと思います。というか、それがベスト。青チャートは割と解説がはしょってありますし、数学でつまずいていたらむしろ挫折感を覚えるレベルの問題が入っています。

基礎をやり直すには「1周が早い」のがベスト。

よって、ここは黄チャートを推したい。

黄チャートは例題からエクササイズまで含めておよそ1000題。

1日10題やれば3か月で終わります(全部やる必要もないし)。

このとき激しくお勧めなのが、「完成ノート」です。

単に例題と練習問題がノートに印刷してあって書き込み可なだけなのですが、これが非常に勉強しやすい。

考えてみたら、中学までは書き込み式問題集が結構あったのに、高校からはないですよね? でも、とりわけ数学の場合は「問題と自分の回答が同じページにある」ことがめちゃくちゃ合理的ですし、復習もしやすい。

私は以前、自分でコピーを張り付けて「書き込み式問題集」を作っていましたが、こんな便利なものがあるなら使わなきゃ損!一冊あたり200円前後、普通のノートの2倍くらい。

 

 

これは1Aですが、もちろん2B、3もあります。

私は今でもこれを常備し、空いた時間にやっています。

 

数学が全くわからなくなった!でも理系志望!というときには、教科書や黄チャートでまず「ひととおり」数学の世界を「俯瞰」できるように「とにかく1周」してしまいましょう!

 

なお、チャート系の「小手先っぽさ」が嫌な人には長岡先生のシリーズがおすすめ!

(チャート系が小手先というわけではないです。でも、チャートは万人向けに書いているので、数学の「真髄」は「コラム」に書かれています。たぶん、目先で忙しい受験生はチャートのコラムを読まないと思う(笑)。その意味で、長岡先生シリーズはおすすめです。でもその分、問題数は少ないです)

  

総合的研究 数学I+A (高校総合的研究)

総合的研究 数学I+A (高校総合的研究)

  • 作者:長岡 亮介
  • 発売日: 2012/09/23
  • メディア: 単行本
 

 

 

2)同時に進めたい計算力アップ

 

不思議と高校生って「計算練習」しないですよね。

もう小中学生のような計算練習は必要ないと思っているとしたら、大間違い!

たとえば2次関数の軸の出し方一つをとっても、毎度クソまじめに平方完成しなくたって、2次の係数と1次の係数を見るだけで軸は出せる。軸が出せると言うことは、10秒くらいで「グラフの概形」が書けると言うことです。

この「一見小さな差」がどれだけ入試本番でモノを言うか。

入試本番で「思考にできるだけ多くの時間を割くために、合理的な計算方法を知っておくのが不可欠」なのです。

計算は、「やり方」を変えない限り、どんなに訓練しても一定以上は速くなりません。

たとえば小学生レベルで言えば

12×0.25を筆算でやっている以上、物理的に15秒以上かかります。

でも、0.25=1/4と考えれば、実に0.5秒で答えが出ます。

これほどまでに高校生とて計算練習が必要なのに、ほんと計算用参考書がないんですよ。。。

私の知る限り、高校生用の計算練習本は3種。

なかでも、「マニュアル通りだと損をする計算方法」「ただ速く解くためではなく『俯瞰』するための計算方法」を教えてくれる広瀬先生の本が秀逸です。

騙されたと思って、この2冊はやるべき!!!!

ちなみに、チャート系はじめ「普通の網羅系参考書」には、こうした「目からウロコ」の計算方法は載っていませんよ!

 

合格る計算 数学I・A・II・B (シグマベスト)

合格る計算 数学I・A・II・B (シグマベスト)

  • 作者:広瀬 和之
  • 発売日: 2014/03/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

合格る計算 数学III (シグマベスト)

合格る計算 数学III (シグマベスト)

  • 作者:広瀬 和之
  • 発売日: 2014/03/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

3)基礎→過去問への橋渡し

「高校の定期テストはそれなりにできるのに入試問題はちんぷんかんぷん、でも解説を読めばわかる」という場合。

これが意外と深刻です。

「解説を読めばわかる」は、そのままでは「できる」になりません。

なぜなら「解法を見つけるチカラ」が育っていないからです。

黄チャートでも「CHART&SOLUTION」をまじめに読んでいる人は力がつくのでしょうが、割とあそこみんな飛ばして読んでるんじゃないかな(笑)。

そんな「基礎はわかっているのに実践では解法が思いつかない」あなたにお勧めなのは。

 

 

 

ズバリ、1対1シリーズです。

数学オタクの著者たちが、これでもかというほど暑苦しく語り掛けてきます(笑)。

網羅性はチャート式に劣りますが、「なぜその解法だととけないのか」「なぜこの解法がベストなのか」が、「受験生の視点に立って」書いてあります。私はもはやこれを何周したかわかりません(笑)。

この本の利用の仕方は、

・解説を絶対に飛ばさず読み込む

・コラムこそこの本の真髄、必ず読む

ということです。

特に「2次関数の最大値最小値は、最大値最小値の『候補』のグラフを描け」という点は、チャートその他の参考書では教えてくれない最高の秘訣です!

 

4)特定の分野を短期間でなんとかしたい場合

 

「だいたい1周できたけど、なぜかこの分野はできない」という場合は、「単元専門書」がおすすめ!網羅系参考書では、それぞれの例題がせいぜい3~5題くらいじゃないかな。それだとやっぱり足りないんですよね弱点克服には。

経験上、多くの高校生が「これだけは無理」となるのは

・確率

・軌跡と領域

・数列

・ベクトル

複素数

じゃないかな、と感じています。

網羅系参考書をいくらやってもできる気がしない単元。

それぞれおすすめは以下の通り。

 

・確率

 

ハッとめざめる確率

ハッとめざめる確率

  • 作者:安田亨
  • 発売日: 2014/08/15
  • メディア: 単行本
 

 

いわずと知れた「ハッ確」です。

場合の数や確率が「できない」理由は「計算ができない」んじゃなくて「全貌が見えていない」から。その「全貌」を見せてくれるのがこの本です。確率で悩んだら迷わずこれをやれ!

 

・軌跡と領域

 

図形と方程式の集中講義 (教科書Next)

図形と方程式の集中講義 (教科書Next)

  • 発売日: 2010/10/27
  • メディア: 単行本
 

 

軌跡と領域も「答えはなんとか出せるけど全体像がわからない」単元かと思います。それにはこちら。

もう一つどうしても紹介したい名著があったんだけど今なぜか見つからないので後日見つけたらご紹介します。

 

・数列

 

まあ、数列は簡単なところなら前述の「合格する計算」で結構すっきりするのですが、それ以上踏み込みたいかたにはこちら。

 

 

数列の集中講義 (教科書Next)

数列の集中講義 (教科書Next)

  • 発売日: 2010/03/20
  • メディア: 単行本
 

 

 

・ベクトル

 

ベクトルの集中講義 (教科書Next)

ベクトルの集中講義 (教科書Next)

  • 発売日: 2009/06/15
  • メディア: 単行本
 

 

ベクトルは、正直網羅系参考書だけではわからない人が多いと思います。でもとてつもなく便利な概念ですし、理系なら物理でも必須。がっつりやりこむことをお勧めします。

 

複素数平面

 

 

ぶっちゃけ、私の時代の大学受験は「行列」だったんです(笑)。

だからこの仕事に戻ってきて複素数平面を見て「え?」ってなったことを覚えてる。だって大学卒業してン十年経ってたし(言い訳)。そのとき、この本には本当に助けられました。「受験に必要な知識」と「その先」をわけて見せてくれるし、あと軽い紙をつかってるのがいい(笑)

 

5)基礎も応用もわかっちゃいるけど解法がみつからないんだよう!という場合

 

それは、問題の「見方」がわかっていないのです。

「こう見てね」という誘導があれば解けるけど、誘導がないとどこから手をつけていいかわからない。

これは高3生向けですけど、「自分の知識をどう解法に結びつけるか」では、以下の二冊がおすすめ。

 

難関大入試数学・解決へのアプローチ (大学への数学)
 

 

 

難関大入試数学 方針をどう立てるか (大学への数学)

難関大入試数学 方針をどう立てるか (大学への数学)

  • 作者:栗田 哲也
  • 発売日: 2018/03/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

なんか私、東京出版の回し者みたいですね(笑)。

もちろん違います(笑)。

ただ、東京出版の本は「小手先の解法」ではなく「数学の真髄」を教えようという気概に満ちていますし、受験生目線で書いてあるので、「得意だったはずなのに行き詰っている高校生」にはぴったりだと思うんですよ。

もちろん、この辺は十分わかっていて、さらに先の「数学の真髄」に触れたい方は「天空の数学」とか「掌握シリーズ」をやるべきだと思います。でも、今回は「わりと一般的な高校生」を想定して書いていますので、ご容赦ください。

 

まだまだご紹介したい名著はたくさんありますが、

「時間の限られた高2~3生」を想定して、今回は絞りました。

また別の切り口で数々の名著をご紹介したいと思います。