1か月空いてしまった。
その間何も考えないということはなく、むしろ「受験」について日々新しい発見もあり考えをまとめる=ブログに書く、ということをしたいのはやまやまなれど。
中受真っ最中でまったくそんな余裕がなかった。
ありがたいことに、来期もすでに満了。
春休みとは(笑)。
戯言はさておき、昨今の中学受験の「信じがたい難化」について黙っておられず、時間がまったくないにもかかわらず久しぶりに記事を書くことにした。
- 1)中堅中学の入試問題の信じがたいほどの難化
- 2)高校数学・現代文・化学物理は当たり前
- 3)出題側の勘違い~「説明してあるから出していい」のか?
- 4)どういう生徒が欲しいのか考えて出しているのか?
- 5)高校レベルの問題を出すなら試験時間を倍にせよ!
- 6)蛇足:東大の入試問題は教科書が基本
1)中堅中学の入試問題の信じがたいほどの難化
以前から、御三家や早稲田系・豊島岡などでは、たしかに高校レベルの問題は出ていた。例えば、硫酸銅五水和物(高校化学)。三平方の定理や二次方程式を使えばすぐ解ける問題、などなど。でも、これらは(時間はかかるが)小学生の知識と能力で「健全に」解けるレベルだった。というか、さすがは難関校、そういう風に出題側が工夫しているのである。
加えて、難関校を受験する子は、個人的興味でその辺をすでに勉強している子も多いだろうから、ここにミスマッチは起きにくい。
問題は、ここ数年、偏差値50前後の学校がこぞって高校数学・現代文・物理化学を出題していることだ。
2)高校数学・現代文・化学物理は当たり前
例を挙げるときりがないが、たとえば。
・富士見中学が三角関数を出題
など枚挙にいとまがない。
国語に至っては、多くの中堅校の国語の「元ネタ」は、なんと高校現代文教科書に載っている文章だ!
さらに、難関校だからこの例からはちょっと外れるが、東邦で対数グラフやイオンが出たり、渋谷幕張でphが出たり。。。
中学受験が過熱するにつれ、従来の難易度の問題では「選別」が難しいのはわかる。
だが、だからといって高校レベルの問題を出せば選別できるというのはちょっと出題者側が安易なのではないだろうか?
例えば、以前も例に出したが、中堅校の共立はそのあたりを非常にうまく誘導し、小学生なりの思考力で解ける良問を量産している学校だ。H28の不定方程式の問題など、むしろ高校生に解かせたいほどだ。だから、中堅校に「熟慮した問題」が出せないわけではないのである。まあ、はっきり言えば怠慢だ。リトルリーグの子にいきなりプロと対戦させるようなもんだ。安易だなあ。。。
3)出題側の勘違い~「説明してあるから出していい」のか?
こうした「高校レベルの理数」が出題されるときは、大人でも読むのが嫌になるくらい長い説明がつく。高校受験や大学受験ならば、それら(イオン、三角関数etc)は知っていて当然だから、もちろんそんな註釈はつかない。中学受験でそれが付されるのは「ていねいに説明してあるからいいよね?」というアリバイ作りに見えてしまう。
だが、想像してほしい。
まったく未知のことを、説明を読んですぐに応用できますか?
それは、大人でも難しいことではないんですか?
高校数学をやっている者ならば、富士見の出した三角関数の問題は「ああ、cosだよね」とすぐわかる。だが、「初見の小学生」が説明を読んですぐに理解し応用できるのか?
それならば、(後述するが)試験時間を倍にするべきではないのか?
4)どういう生徒が欲しいのか考えて出しているのか?
中堅校の、意欲はわかる。
塾で(言葉は悪いが)日光猿軍団の猿よろしく「手順」を教わって手順通りに解く子ではなく、未知の問題にも果敢に挑める子が欲しい。それは、難関だろうと中堅だろうと想いは一緒だろう。
だが、自分たちがどういう子が欲しいのか、今一度考え直してほしい。
「見たこともない問題に取り組む子が欲しい」?
それならば、残念ながら思いが空回りしている。
未知の、高校レベルの問題は「捨て問」になるだけだ。
だったら、試験時間を2時間にすればいい。
2時間あれば、難問にもじっくり取り組める子が「選別」できる。
40分の試験時間では、「要領よく得点源の問題をしっかりとる子」が受かるだけだ。
5)高校レベルの問題を出すなら試験時間を倍にせよ!
三角関数。
イオン。
二次関数。
高校レベルの評論文。
こうした問題は、真に賢い子なら「時間さえあれば」考えられる。
塾でテクニックだけ学んでいた子は、残念ながらどれだけ時間をもらってもできない。
だから、
こうした問題を出すなら試験時間を倍にするべきだ。
あるいは、それらの問題の配点を、定番問題の2~3倍にするべきだ。
これは都立高校の入試でも言えることなのだが。
結局全部同じ5点なら、たいていの子はそれらを「捨てる」。
だが、
「それらを捨てて要領よく合格点を取る子」を
「前半を落としても、それらに挑み、解く子」が
入学後は抜いてしまうのである。
だからこそ。
初見の、高校レベルの難問を出すなら。
「それらに挑む力・気力がある子」が報われるテストにしてほしい。
40~50分というのは、実に「あっという間」だ。
じっくり未知の問題を考える暇なんてない。
ちょっとこだわって考えだしたら10分くらいすぐに過ぎる。
だから、昨今の受験生は「捨て問」を知りたがる。
これって、本末転倒なんじゃないですかね?
誤解を恐れずはっきり言わせてもらえれば、「受験生が中堅校に求めているもの」はそれじゃないんですよ。
だからそこらじゅうでミスマッチが起きているんですよ。
自校のレベルを上げたいなら、高校レベルの入試を出して「選別」するんじゃなく。
入った子たちを、まさに「初見の問題に粘り強く取り組む」ように指導することが先じゃないんですかね?
時間はかかりますよ、たしかに。
でも、そうやって「学校が先に変わって」こそ、入る子も変わってくるんじゃないんですかね?
6)蛇足:東大の入試問題は教科書が基本
東大の入試問題は、本当に面白いです。
なぜなら、奇をてらった問題は絶対出ない。
教科書に載っていない知識を使う問題は出ない。
紐解けばそれほど難しくないのに解けない。
それは、「教科書の知識」を自分で組み合わせるチカラが足りないからです。
知識は少なくていい。
でもそれを「自分で応用する力」こそを問うのが東大入試です。
だからこそ、東大の試験時間は長い。
数学6問で150分。
150分あれば、「わかってたのに時間がなくて解けなかった!」ってことはないです。
未知の問題に2時間半、頭を振り絞って格闘する。
東大はそれを求めています。
昨今の中堅中学の入試問題は
・いたずらに(安易に)難化
・なのに試験時間設定は「処理スピードを測る」時間設定
それが問題だと強く感じています。