とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

伸ばす親、つぶす親(2)~講師との関係~

前回は、主に親子の関係について書きました。

 

mikoto2020.hatenablog.com

 

今回は「家庭教師との対応」に絞って書きます。つぶす親についての話がメインです。比較対象として、伸ばす親がどういう対応かはそれぞれ末尾に書きますね。

 

 

1)つぶす親は、話が長い

とにかく、話が長い。

子供への説教が長いのは当たり前、家庭教師をどれだけ引き止めても気にしない。

自分の気が済むまで話す。

しかし、その内容はほとんど愚痴。

タイムイズマネー。

仕事なさったことがないんですかね、こういう方々って。

我々家庭教師は、時間で動いてます。節目ごとの進路相談や、真剣に話し合わなければいけないことがあれば、もちろん時間無視してご相談に乗ります。でも、「話し相手が欲しい」だけの非建設的な繰り言なら旦那さんやママ友と話してください。お願いします(切実)。ちなみに学校の三者面談で後ろにほかの親子が待ってるのもおかまいなく平気で1時間でも話し続けるのもこのタイプですね。

我々はまだいい。

子供にどんだけ長時間説教してるんですかって話。どうせその説教、子供は聞いてませんから、その分気持ちよく問題解かせるか、あるいはさっさと寝かせたほうがいいです。「自分が楽になるためだけのお喋り」が「他人(子供・講師)の時間を奪っている」ことを自覚しましょう。

 

伸ばす親は、必要なとき以外は面談が短いです。伸ばす親は、愚痴で他人の時間を奪いません。

2)つぶす親は、アドバイスを聞く気がない

1)の「喋り続ける親」が迷惑なのは、「どうせ講師のアドバイスは聞かない」からなんです。お悩みに対して、こちらが真剣に調べ、いろいろな解決策を話しても即座に否定します。

 

たとえば。

私「まずは、日常の基本動作ができていないことから始めては」

親「テストでいい点が取れればいいんです!」

私「〇〇塾は親御さんが完璧にサポートしないと難しいと思いますが」

親「〇〇塾についていけば、たとえドベでもいい中学に入れるはず」

私「そこまで仰るなら、ご父兄のどちらかがベタでサポートされたほうが…」

親「仕事を辞める気はありません」

私「明らかにオーバーワークです。基本に戻りませんか?」

親「でも、無理にでもついていけば××には入れる可能性が高いですから」

私「お子さんは記述力があるので△△校の方が向いてるかも」

親「△△は向いてないと思います!やはり××(親の志望校)」

  

一事が万事、こんな感じです、つぶす親は。

このケースの場合、親御さんは「大丈夫ですよ、きっと××に入れますよ」という言葉以外聞きたくないんです。

だったら話す意味ないよね?時間返して?

もうね、あれですあれ。

女子高生の恋愛相談と同じ。

A「彼が最近冷たいの。他の子とデートしてるのも見ちゃった」

B「ああ、それは早くあきらめるか本人に確かめな?」

はい、このBさんはAさんに恨まれて終わりです(笑)。

Aさんが聞きたいのは「大丈夫だって、そんなの誤解だよ!彼はAが絶対好きだよ!」という言葉だけです。まあ、恋愛相談なら自分のことだし勝手にしろですが、子供でそれをやるのはやめましょう。子供は別人格です。

 

伸ばす親は、真剣にアドバイスを検討します。伸ばす親御さんは、たとえご自分の信念や見聞と違っても、他者の意見は「とりあえず聞いてみる、やってみる」姿勢です。素直なんです。これは、子供にも遺伝していますね。「聞かない親」の子は「聞かない」です。

3)つぶす親は、「自分の志望校」で決める

別途詳しく書くつもりですが、受験の真実、それは何かというと。

本人主導か、親主導か、の違い。

 

持ち偏差(という言い方自体嫌いなんだけど)と志望校偏差値にたとえ20のギャップがあっても、本人主導の場合、やりとげるorたとえ不合格でもその後が良いです。だって、自分がやりたいんだから死ぬ気で頑張るし、たとえ結果はダメでも自分がやりたくてやったんだから、どこかで折り合いつきますよ。

 

片や、親主導の志望校の場合。運よく受かればいいですけど、「よくて3人に2人が落ちる」のが都内私立受験ですからね?下手すりゃ「10人中9人落ちます」からね?

我々家庭教師は、子供を見たらだいたいどこが妥当かわかります。学力だけの問題ではありません。性格も含めて、です。「地頭×努力する力=実力」ですからね。周囲からのアドバイスは、その部分も含めて申し上げているわけですが、「つぶす親」は、どれだけ周囲が「その子には〇〇が合っている」と言おうと一切聞きません。結果、「2月1~5日まですべて『特攻』」になったりします。

もう、ほんとこの場合は悲劇。中高生ともなると、良い意味で図太くなってる(=親を客観的に見ている)から、うまくスルーしつつ乗り切ります。でも、小学生の場合。自分がそこを望んでいたわけではないのに「親を悲しませてしまった」ことで自分を苛む。当の親自身は、まるで自分の夢が破れたかのように嘆き悲しみ、受容できず、「高校でリベンジ」とか言い始める。何度でも書きますけど、「リベンジ」したいんだったらご自分が東大受け直してくださいな。
子供は、大人が思っているより多くのことを見抜いていますよ。自分に受験をさせ、志望校を変えさせず、落ちたら高校でリベンジと言っているのは「つぶす親」の見栄からだということ、子供は全部見抜いていますよ。

 

以前、子供はつるかめ算も理解できていないのに母親が「何が何でも〇〇!!(女子御三家)」というご家庭がありました。授業中、その母親が生徒の弟を「なんで浮力ができないの!?」と怒鳴りちらす声が響き渡るすさまじい環境でした(弟さんは小3、しかも発達障害診断済み)。この生徒自身、宿題はしないわ授業中立膝だわ、いろいろ問題児でしたが(笑)、彼女が「私は〇〇なんて無理だけど、あと半年(母親に)言わせとけば気が済むから」と言っていたのが今でも印象に残っています。子供の能力無視して見栄で〇〇に入れたい、常軌を逸した母親を、つるかめもできない子がむしろいたわってあげているんです。涙が出そうになりました。この子の、取り返しのつかない「小学生としての時間」を奪ったことを、このお母さんが気づいて猛省してくれていればいいがと願わずにいられません。

 

一方、「伸ばす親」は

・我が子の志望が第一

・我が子の「性格」を熟慮

・パターンを熟慮し、我が子の気持ち優先で「話し合う」

ですね。

「伸ばす親」は、ぶっちゃけ言うと「子供がどこに入ろうと気にしていない(=エンブレム受験ではない)」です。

4)つぶす親は、現実を受け入れない

前の記事で「過去の栄光」について書きました。 

mikoto2020.hatenablog.com

 「つぶす親」は、現実を認めません。「株価の最高値が忘れられないギャンブラー」とそっくりです。

 

つぶす親は

・あのとき偏差値があれだけとれていたんだからそこまで「戻るはず」

・我が子が〇〇に入れないとかありえない

と考えています。

 

一方、伸ばす親は

・偏差値の平均を見る

・それがたとえ理想と違っていても子供を責めない、受け入れる

・偏差値は「周りとの比較の結果」と理解している

5)つぶす親は、ただただ偏差値重視=エンブレム受験

前回も書きましたが「東大(難関大学)に入れば人生なんとかなる」のはウソなんですよ。

 

mikoto2020.hatenablog.com

 

これまた長くなるので次回以降に詳しく書きますが、東大はじめ難関大学に入ることが「プラチナチケット(byドラゴン桜)」になるのは
・人並みにコミュニケーションができる→民間で成功の可能性あり

・大学に残って研究者になる

しかないと思っていただきたい。

「東大卒」だというだけで食っていけるほど世の中甘くありません。

東大卒でも就職できない人はいますし、就職後の出世は実力次第。結果的に東大卒は良い会社に入って出世する割合は高いでしょうが、それは「東大を卒業したから」ではなくて「東大に入る力があったから」であって、原因と結果が逆。「オトク度」だって、もしサラリーマンならせいぜい年収差100~200万くらいじゃないかな(日東駒専レベルとの差)。まあ、たしかに年収100万違えば2年で車買えますけど、でもそれって誤差じゃないですか?すべてを投げうってその差を取りに行きますか?そもそも、「幸福感」って年収と比例してませんし、中卒・高卒で大卒より稼いでる親友、たくさんいます。

何が言いたいかと言うと、つまり

東大って、「コスパ」悪いですよ?(笑)

東大って、アンチ東大の嫌がらせを受け流しながら、それでも「東大ならではの成果」を上げないと納得していただけませんし、ほんと社会に出てからは「逆差別」の方が多いですよ?3教科受験で早慶行った方が、民間ではよほど「コスパ」いいんじゃないかな。

 

で、じゃあ、なんで私たちが東大に行ったか。

行きたかったから、ですよ。本人が。

正直、東大というエンブレムが欲しかった、という人もいるでしょう。

でも、それよりも、私たちは何より「勉強が好きで好きで仕方がなかった」んですよ。

「東大生あるある」は「勉強が好きでしかたなくてやり続けていたら親が心配して『遊べ』だの『恋愛しろ』だの言ってきた」です(笑)。

私もそうでした。「もっと難しい問題を解きたい」と勉強に夢中になってる中学生の私に、母親がしたことといえば「明星」を買ってきてオシャレすれば?恋愛しないの?でしたからね(笑)。おかげで高校で遊びまくって高3秋まで東大E判定でしたがそれはまた別の話(笑)。

つまり、東大って「そういうところ」なんです。コスパとか一切気にせず「もっと学びたい」子が行くのが東大です。

本人が「エンブレム」を望んでるなら、まだいいんです。

親がエンブレムを望むことの無意味さを知ってほしい。

 

一方、「伸ばす親」は、エンブレムに興味ありません。

・自分の子供のキャラに合ってるかどうか

・その学校が信頼できるかどうか

に重きを置いて志望校を考えてますよ。

 

何度でも言います。「〇〇合格」というエンブレムが欲しければ、ご自分が再受験して下さい。あなたの子はあなたではありません。ましてや、自分にはとても無理な難関校に子供を駆り立てる親って何を考えているんだろう。自分の遺伝子を受け継いでいるのにかわいそうだよ。

 

「つぶす親あるある」はまだまだありますが、長くなったのでまた今度。