ミス。
これに頭を悩まされたことのない人は皆無に近いのではないでしょうか。
かくいう私も、もちろんその一人。
私の場合は「テストでのミス」はほとんどないのですが、日常のミスがすさまじかったです…。好奇心が強く、常に前のめりで生きてきたので「後ろを振り返る」ことができなかったんですよね(^^;
それがなくなったのは、まず加齢による落ち着きもあると思います(笑)。もう一つ、一番大きな原因は「フリーになったこと」ですね。会社員時代は、自分が売り上げトップだったこともあり「私稼ぐ人、あなたチェックする人」みたいな役割分担ができていて、それに甘えていました(猛省)。まあ、自己弁護ではないですが、会社は適材適所ですからね。アイデアマンは細かいこと気にせずガンガン前に進んだほうがいいし、逆にそれはストレスで人のサポートするのがやりがいになる人もいるわけで、それが「組織の力」ですよね。でも、フリーになったらミスは命取りになるわけです。「結局精神論かよ」と思われるでしょうが、やっぱり「ミスは命取り」という心構えがあるかないかは大きいと思います。
前置きが長くなりました。
このシリーズでは「ミスによる失点の減らし方」を考えてみます。
大きな心構えや日常生活の改善から、細かいTipsまで多岐にわたるので、とりあえず今回は大きな視点でとらえてみますね。
- 1)「自分はミスをしている」という前提に立つ
- 2)「ミスをしない」ではなく「ミスに気付こう」と考える
- 3)自分のミスの「クセ」を知る
- 4)「腹八分」にすればミスは激減する
- 5)「ミスをしてもいい時期」がある
1)「自分はミスをしている」という前提に立つ
ADHD気味だったりすると、頭はいいのにミスで50点失点などという笑えない事態になったりしますよね。こういう特性の子供や生徒は、基本的には頭の回転が速いですし、またそれを自覚しています。このタイプのミスがなかなか減らないのは
・わかっているから別にいい=ミスの軽視
・自分が間違っているとは考えていない
・一度やったことを繰り返すのが大嫌い
のが原因のようです。
「自分は絶対ミスをしている」という前提を自覚するのが初めの一歩と言えます。
このタイプは、おそらく忘れ物が非常に多いはずです。
まず、日常から改善しましょう。
ダブルブッキングや、逆に約束を忘れてしまうことも多いはず。常に「自分は絶対何かやらかしてるはず」と考え、学生だったら「前日の夜」「家を出る前」に「やらかしている前提で」確認するとよいです。
あと、このタイプはなまじ地頭がいいゆえに、メモを取りません。
厳しい言い方をすれば、自分の頭を過信しているのです。
スケジュールや連絡事項、絶対にメモを取るのをクセにするといいです。
少々脱線しますが、受験をするにしろしないにしろ、この「自分への過信からのミス」はできるだけ若いうちに修正したほうがいいと思っています。このまま社会に出ると、ミスで損失を出したり周囲に多大な迷惑をかけても「自分は正しいのになんでミスごときでここまで叱られなければいけない?」となりがちですから。そういう新人くん、たくさん見てきました…。
2)「ミスをしない」ではなく「ミスに気付こう」と考える
ミスはゼロにはできません。
「ミスをしないようにしよう」と考えると、テスト中ずっと脳が緊張することになり、かえってミスをするという皮肉な結果になりかねません。
ミスは「気づいて修正」できればよいのです。
この「ミスの気づき方」はTipsになりますので、次回詳しく書きますね。
3)自分のミスの「クセ」を知る
人によって、ミスの「クセ」は様々です。
問題の誤読が多いのか、計算ミスが多いのか、計算ミスならどういうタイプの計算ミスが多いのか。そういったミスの「種類」に加えて、「自分がミスしやすい状況」というのも確実にあります。
私は生徒に必ず「なぜ間違えたか分析」をさせていますが、ほとんどの生徒が「これはミス」と流してしまうんですよね。ですから、さらに突っ込んで「どういう種類のミスなの?このときどんな状況だったの?」と尋ねるようにしています。
これまたほとんどの生徒が「焦っていた」と答えます。
「ではなぜ焦ったんだと思う?」と尋ねることにしています。
しつこい講師ですね、私(笑)。
でも
「自分はどういう状況で焦るのか」を知るのはとても有効
だと思いませんか?
それを知っていれば、同様の状況になったとき「あ、こういうとき自分はミスしがちなんだよな、気を付けよう」と思える日がきっとくるはずです。
4)「腹八分」にすればミスは激減する
3)とも通じる話ですが、ミスは「余裕がないとき」に起きがちですよね。
時間的余裕のなさは、指数関数的にミスを誘発します。とはいえ、時間がありすぎて緊張感がゼロでも人はミスが増えますから、これが人間の面白いところなのですが。
睡眠不足などもミスを劇的に増やします。
つまり、受験生と言えど「余裕」は絶対に必要なのです。
いわゆる「追い込み」は年が明けてからで十分。
人間の脳は、そんな長期間の「エネルギー充填120パーセント!」に耐えられません。波動砲は連発して打てないんですよ(って、ネタが古すぎますね(笑。
でも、多くの親御さんは「このミスがなければ〇〇点だったのに!!!キーッ!」となってさらに負荷を増やしてしまうという大間違いのコンコンチキな勘違いをします。
いいですか?
ミスを多発する、ということは「余裕がなくなっていることのサイン」なんですよ。
これ、仕事だったらわかりますよね?同僚が、普段しないミスを連発していたら「モルダー、あなた疲れてるのよ」と休みを促しませんか?
「わかっているのにミス連発」ならば「より多くの問題を解かせる」ことは禁物。
むしろ、量を半分にして様子を見てください。
それでミスが減るならば、それが現時点でのお子さんのキャパシティということです。
認めたくないでしょうが、それは認めてください。
もちろん、適度な負荷をかけないとキャパシティは増えていきませんが、その「適度」をきちんと見極めないと逆効果です。
ミスを多発しているときこそ、スピードを抑えてみるのが肝要です。
「適度な負荷のかけ方」については、後日また書きます。
5)「ミスをしてもいい時期」がある
人には「技能を伸ばす時期」と「それを昇華する時期」があります。
同時にはできません。
ただでさえ、中学受験は5年生までに基本事項ということで新たな概念をガンガン詰め込みますし、中高一貫校だと6年分を5年間で、高校独立型だと実に3年分を2年間で詰め込むわけです。
人は新しい概念を習得するとき、まずはそれを飲み込んで理解することに全力を注ぎます。この期間にはミスなんて気にしていられませんし、気にするべきではありません。
ピアノやバレエのレッスンと同じです。
新しい曲や振付を「習得」するときにミスを気にしていたら本末転倒です。まずは間違えてもいいからどんどん練習し、体が覚えた後で仕上げていくのではないでしょうか。
勉強も同じです。
あらかた習得できたうえで、その後ミスを減らし完成させていけばいいのです。
残念ながら、多くの親御さんや受験生本人が「その2つを同時にやらなければいけない」と誤解しています。いや、それ無理ですから。
あくまで私の経験上ですが、小6や中3、はたまた高3の夏ごろまでミス連発していても、本番が近くなると、なにより本人が「ミスでの失点はしたくない」と強く思い始めるのでミスは激減していきます。やっぱりね、ミスって「本人がどれだけミスを嫌がっているか」「ミスの痛さを知っているか」でしか治らないんですよ。
ただ、ミスの原因が、前回書いた「概算ができない」など、「理解していないことが原因」の場合は、まずそこを改善することが必要です。
次回は、ミスを防ぐためのテクニカルなTipsについて書く予定です。