難しい問題ですね。
ここでも書きましたが、本人の性格によるところが大きいです。
ただ、私は声を大にしていいたい。
本末転倒になっていませんか?
「鶏口か牛後か」でも書きましたが、そこが本人の「なにがなんでも」のゴールな場合、たとえ最下位でも満足できるでしょう。
でも、塾って通過点ですよね?
「サピックス学園中等部」とか「早稲アカ中等部」に進学するわけではありませんよね?目的はあくまでも志望校合格ですよね?
異論もあるでしょうが、私は「その集団で常に平均以下な場合、人はやる気をなくす」ということを経験上信じております。鶏口か牛後かで言えば、「牛後でも、むしろやる気を出すタイプ」でない限り「鶏口」が良いと考えております。
1)トップ塾についていけばなんとかなるという誤解
「偏差値50」って、親御さんが思っているよりも、子供にとっては大きいです。偏差値50=その集団の平均、ですよね。「自分は平均以下」って毎日毎日思わされる日々ってキツくないですか?親御さんは自分ならそんな毎日に耐えられますか?
しかも、その「平均」は塾によって違うわけです。
中学校のランキングも、しかり。
サピ偏差値40とかだと「40」という数字にばかり目が行って、親御さんは「受ける価値なし」などと考えたり、本人は「自分は40なんだ…」と思ってしまったりします。
そういう劣等感を毎日毎日植えつけられて、それでも「下剋上してやる」という子は多くはないように感じますがいかがでしょうか?
「豚もおだてりゃ木に登る」じゃないですけど、まだまだ客観性のない小学生には「お山の大将気分」がむしろ力を伸ばすエネルギーになることも多いです。
トップ塾に行くことは「自分/我が子の力が過小評価される危険性」と裏腹だということは忘れずにいたいですね。
「いや、自分の立ち位置を知って、たとえ最下位でも逆転するという意志で頑張ってほしい」という親御さんも多いですが、じゃあ、ご自分が「やってもやっても追い抜けない集団」に放り込まれて平気かどうかを今一度考えてみてほしいです。
2)「適切な」負荷が一番伸ばす
スポーツの試合や、ゲームを考えてみてください。
「片手で勝てる相手」や「どうあがいても勝てない相手」との試合ってやる気がしないですよね?
たとえば「ドラゴンクエスト」でいえば、スライムと闘ってても面白くない上に力はつきませんし、一方で「村を出た瞬間にラスボスがいたら」やる気なくしますよね?
つまり、人間って「勝ち負けが4:6」くらいのときに、一番やる気もでますし力も伸びるのです。
ちなみに、ゲーム業界ではこれを「ゲームバランス」と呼んでいます。簡単すぎても難しすぎてもつまらない=売れないのです。
あなたのお子さんの塾があなたのお子さんに与えている負荷は「4:6」ですか?
3)「ついていけない」塾にすがる逆効果
やってもやっても追いつかない。
それは。
「塾の授業を、授業内では理解できていない」んです。
家庭での復習が大事、というのはまやかしです。
復習は「だいたいわかっていてこそ効果がある」のです。
塾の授業がさっぱりわからない場合、家庭学習もクソもありません。
我が子にどの塾が合っているかを考えるとき
テキストの「解説がていねいかどうか」を、ぜひ見ていただきたい。
はっきり言いますね。
「サピックスの解説」は、「授業についてこれている子向け」なのです。
サピックスの授業内でわからなかった子が、あの簡素な解説を読んでわかるようになるとはとうてい思えません。それくらい、サピのテキストの「解説」はその役目をはたしていません。言い換えれば、サピックスは「授業内で理解できる子」向けの塾なのです。授業についてこれない子は「埒外」なのです。だからこそ、サピと家庭教師や個別の併用は非常に多いです。私の仕事は前も書きました通り塾との併用3割ですが、その塾とはすべてサピックスです。
それでもサピックスをやめたくない場合、個別or家庭教師は必須です。
個人的な意見ですが、
・理解できる授業を受け
・わからないところを質問できる
これらにストレスのない塾が「合っている」んだと思います。
4)サピックスにも「苦手校」はある
校舎ごとの差も大きいと思いますので、あくまでも私の経験上ですが。
サピックスは、成り立ちから考えても「御三家御用達」の塾です。「超」のつかない上位難関校は相手にしていません。
だから、
「偏差値上げればどこでもOK」という、「雑な指導」
になっていると感じます。サピを批判したいわけではありません、念のため。でも、御三家もそれぞれカラーが全然違いますし、難関校・大学付属校でさらにカラーは異なります。どこでも受かる「エイリアン枠」なら別ですが、サピのテキストや授業、あるいはサピックスオープンは御三家および国立向けですので、もし志望校がそこではないのなら完全に「やりすぎ」です。
私は、これまで数多く「サピと併用」の生徒を受け持ってきました。その生徒の志望校が御三家+新御三家以外の場合、過去問添削もまともにしてもらえていないなと臍を噛む思いでした。彼らは「塾の宣伝になる学校」以外の中学校の過去問分析すらしていません。我々個人講師がその生徒のためだけに10年分過去問を解き、つかんだ「予測」すなわち「今年はここは難化するよ、油断するな」すらも見抜くことができていませんでした。彼らにとって「開成&桜蔭」以外は意味がないのだと痛感しています。
ぶっちゃけ、サピに御三家&準御三家以外のアドバイスは期待しないほうがいいです。
そもそも、「中・下位クラス」のことも真面目に考えてくれているのならば、「塾に遊びに来ている層」に対する退塾勧告がないのはありえません。これはサピックスに限りませんけどね。スポ小やスイミングスクールなら「辞めさせられる」ことがある。私も、自分のやっている私塾では「遊びにくる子」は辞めさせるorご父兄と話したうえで個別指導にしています。塾だけはそれがないのはなぜか、それは「ギョーカイ」のことを考えるとわかるかもしれません。
私の場合は、それぞれに合わせて指導します。学級崩壊を起こすほどの子でも、マンツーマンだと「その子に適した指導」ができ、確実に向上できてきました。集団塾では、それは無理でしょうね。 集団塾を責めるつもりはありません。問題は「そこに行かせていれば勉強になっているはず」という誤解です。集団塾がスポ小のように退塾勧告をしない以上、下位クラスはサークル活動のノリになっていることを知ったほうがいいと思います。集団塾は、下位を伸ばすところではないです。下位を底上げしようという意気があるのは、むしろ皆様がたぶんお嫌いな(笑)学校です。
5)転塾・退塾の見極め
これについての具体的な話は、また長くなりそうなので別記事で書きます。
ただ、ひとつ言えることは
子供が「転塾したくない」という場合、それは決して「そこで頑張りたい」ということではない、ということは頭の片隅に置いていただければと思います。
私も驚いたのですが、いまや小学校において「どの塾に通っているか」が「マウントに使える」らしいんですよね。Nの子に対してSの子がマウントとって嫌がらせしてるケースは、受け持ちの子(ノー塾で私のみ)から聞きました。まあ、私の経験なんて半径5メートルですから、それですべてを断じる気は毛頭ありませんけれども。でも、某トップ塾中下位の子が、イライラから、より弱い子をいじめるケースはそのほかにも、多々聞いております。
話がそれましたね。
これはまた別記事で書く予定ですが
「〇〇に行きたい」とか「〇塾に行きたい」とかいう子供の言葉で、親御さんが「すわ、御三家!!!」とか思わないほうがいいと思います。
「〇〇に行きたい」、はたぶん「米津玄帥になりたい」程度の夢かもしれない。
「〇塾に行きたい」は、友達が行ってるから。
子供の、そういったたわいもない言葉を、多くの親御さんは「変換」してしまうんですよね。「望んだと言うことは、うちの子は〇〇を目指していると言うこと!」と。
これが「藤井くんになりたい」「羽生君になりたい」etcだったら、本気にしないはずなのに(苦笑)。
「中受したい」「〇塾に行きたい」というのは、多くはそこまで本気ではないです。
それを親御さんが「すわ!あわよくば〇〇!」と思い込むことが中学受験ならではの悲劇だと思いますね。たとえば、これが「普段YouTubeばっかり見てスマホ中毒の中高生が『俺は東大に行く』とか言い出し」ても本気にはしないでしょうにね。中学受験ならではですね。
ピアノのレッスンのように「家で練習することが前提の習い事」と比べてみると良いでしょう。ピアノは、家で練習しなかったら辞めさせますよね?それと同じです。本気で〇塾で勉強したいと思っていたら、自学します。それをしないのに「辞めたくない」というなら、それは「サークル活動」と同じことでしょう。