とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

子供の前で言ってはいけない言葉

子は親の鏡、とはよく言ったものです。

長年私塾経営や個人コーチをしていて、つくづく「子の親にしてこの子あり」は真実だなと感じています。良い意味でも悪い意味でもね。

 

今回は「子供に間違った価値観を植え付ける」という観点から「言ってはいけない言葉」を上げてみたいと思います。

 

1)「公立なんて」

 

筆頭はこれ(苦笑)。

私立中受験を選んだ親御さんの公立中憎悪は怖くなる時があります(苦笑)。

人って「自己肯定バイアス」がかかるんですよね。

自分の選んだ道は正しい!と思いたい。

だから、選ばなかった道(=公立中)を過剰に否定する親御さん多いですが、やめましょう。

 

正直、公立中のどこが悪いのかさっぱりわからない。

 

内申点は教師が好き嫌いで決めている」なんていうのは半ば都市伝説。

以前も書きましたが、「不当な内申つけられた!教育委員会に訴えてやる!」なご家庭の実態を聞いてみたら提出物を出してなかったというのが後からわかったことも少なくありません。

 

ネットでは「ウチの子は実力があったのに中学のせいで!」と言いたい人(実は本人に原因あり)が話を盛っているケースが多いので注意しましょう。

 

「当たり前のことを当たり前にできる」「約束を守れる」子なら、内申点おそるるに足らず、です。

 

話が逸れました。公立高校受験については、別途記事にします。

 

受験ギャンブルにハマって鼻息荒い親御さんほど、公立小学校を馬鹿にしまくります。

ウチの子にはカンタンすぎる、と言って。

 

でも、公立小の良さって「体験させてくれる」というところじゃないんですか?

「『知ってる!』というと教諭が嫌な顔をする」と言う方もいますが、机上の理論と実践は天と地ほど違いますからね?

受験勉強で天体や浮力やてこの「計算」ができても、東西南北がわからない子や、2人で荷物を持つときに全然バランス取れない子とか山ほどいますからね?それ「知ってる」って言えるんでしょうか(苦笑)

 

もちろん、公立小の教諭すべてが素晴らしいという気はないです。

でも「『知ってる』と言ったら嫌な顔された」というのは「テキストだけでわかったつもりになっていることをけん制された」という場合が多いと思うんですよね。

 

ぶっちゃけ、「学問を究める」なら学校にも塾にも行かず、ずばぬけた家庭教師をつけて自学するのが一番効率いいです。じゃあ、学校の意義って何なのか。それは「社会で生きる術」を体験し身につける場所ということだと思います。

協調性とかいいたいんじゃないです。

 

「自分のわがままが通らない世界があるということ」「他人との距離感」「他人との駆け引き」などなど、そういうのは体験でしか学べません。

 

「公立小中の子たちなど、将来交わりませんから」というのも、親御さんからよく聞く話で閉口します(汗)。あのですね。最近は医学部志向が高まっているようですけどね。医者になったら、あなた方が今馬鹿にしている看護師や麻酔医と「仕事」をするんですよ?民間ならさらに言わずもがな。私は高校大学は似たようなメンツで「パラダイス」でしたが、民間就職したとたんに「中学校に逆戻りだな」と感じましたよ。そのとき心底「公立小中でいろんな経験してきて良かったな」と痛感しました。

 

「頭のいいメンツ」とだけかかわっていればいい世界なんて、大学に残る以外ないと思う。霞が関ですら、ノンキャリとうまくやらなければいけないんですからね。

 

話が逸れました。

「知ってるつもり」の知識を実体験させてくれるのも、小学校です。

アサガオやトマトの「知識」はあっても、育てるのは別ということを教えてくれる。

 

親が公立小や公立中を馬鹿にすると、子供は簡単に真似しますし、その価値観で生きていきます。「他人を馬鹿にして自己肯定感を保つ」子供になります。その怖さについては後述します。


2)「〇〇校は出口がね…」

受験ギャンブルにハマって夢を見ている親御さんの志望校は、たいてい「子供のポテンシャル+偏差値10~20」です(苦笑)。

 

だから、夢を見ている間は子供に「(親御さんの理想に比べると)劣る学校」を、マジで「ろくでもない」とか「××落ちた子が行くところ」とか「そこまで(志望を)落としたくない」とか、子供の前で言っちゃうんですが、これ本当の本当にマジで禁句です!

こういうご家庭の場合、すでに子供はいっぱいいっぱいやっていて「そのレベル」なんです。「伸びしろ」はあまり残されていません。

結果、あれほど馬鹿にしていた学校を受験することになります。

そのときの子供の気持ち、わかります???

親が馬鹿にしていると、子供も馬鹿にするようになります。

 

小5、あるいは中2、高2。

その頃は親の真似して「〇〇は××の抑えだよね」なんて言ってた子に限って「××に受かれば御の字」になったりします。

 

いざ受験が近づいて「バカにしていた学校を受けるしかない」状態で、受かったとしても果たして楽しく中学に通えるでしょうか?

 

慌てて「〇〇はいい学校!」とか言い出す親御さんも多いですが、子供はちゃんと覚えてますよ。親が〇〇はバカ学校だと蔑んでいたことを。 

 

 

3)下位クラスを馬鹿にする発言

某トップ塾に子供を通わせている親御さんに多いですね。

某教育系掲示板などを見ていても、その塾の親御さんのマウンティングは他塾に比べてちょっと異質だなと感じます。

経験上、親御さんの学歴(この言い方嫌いなんですけどね)が低めの方ほど、比較に過敏で、子供の前でほかの子を見下す発言を平気でする傾向がありますね。ルサンチマンなんでしょうか。でもその恨みは、子供を使わずご自身で晴らしたほうがいいです。

 

「順位が下の子は蔑む対象」という価値観は、いつか自分の首を絞めます。

生涯を通じてナンバーワンは、あり得ない。

上には上がいる、というやつです。

さんざん自分より低い人間を見下してきて、自分が「見下される立場」になったときの恐怖は計り知れないですよね。

 

不動のトップ層は、人を見下しません。

 

蛇足ながら、東大卒の中には「〇〇大はクソ」的な発言する人が一部にいます。嘆かわしい。彼らはそれしか誇れるものがないんだな…と生暖かい目で見ています。ほとんどの東大生はただの愛すべき勉強オタクなので、「〇〇大は馬鹿」みたいなこと言わないんですけどね…。

 

人を見下すことだけでアイデンティティを保っている子というのは、失敗を異常に恐れます。自分がこれまで「失敗する子」を嘲笑ってきたから、自分がその立場になったら嘲笑われると思ってしまうんでしょうね。

可哀そう。

他人はそこまであなたに興味がないというのに。

 

人と比べての優越感なんて、しょせん砂上の楼閣。

その価値観は、いずれ子供を壊します。