とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

効果があった参考書&問題集(1)国語編・

うちには6畳の「書庫」があります。大工さんに作ってもらいました。

学校や集団塾の先生なら「自分のやり方」を通すことが許されているんでしょうが、我々はオーダーメイド。偏差値30~70と幅広いご依頼に応えるには、教材研究が欠かせません。まあ、勉強オタク&教材オタクだからという趣味の側面も否定しませんが。

 

「買って良かった!」「神本!」と感じる教材の中で、あまり人に知られていない本をご紹介したい。半ば「信者の布教」ですね(笑)。一方で、自分のための備忘録でもあります。

 

とりわけ、国語&現代文は「どうやって自学したらいいかわからないNO.1の科目」ではないでしょうか。目についた参考書はかたっぱしから買ってきた自分が「実際に生徒に効果があった本」をあげてみます。

 

まあ、これを言ったら身も蓋もありませんが、国語をなんとかしたかったら個人コーチをつけるのが一番です。「国語ができない」というのは、他教科とはちょっと違って「それまでの生育環境」「人の話に興味を持つ子かどうかという特性」など根源的なものが関わってきます。「本を読めない」から国語ができないわけで、そういう子に参考書だけ渡してもできるわけがありません。だって、国語の参考書もまた「言葉」で書かれているのですから。また、集団塾ではそういう子は「解説聞いてるだけ」です。

親御さん、あるいは個人コーチがガチで対話(教え込むんじゃないですよ、対話です)するのが現状突破のカギです。

ですから1)~3)は、「大人がコーチングする前提で」お考え下さい。4)~5)は、中高生が自学できる本です。

 

 

1)国語が超苦手な小学生向け

想定レベルは

・高学年になっても2語文3語文という「論理性のないしゃべり」の子

・「その日の出来事」を思いついた順にしゃべる子

・記述をさせると主語述語が対応していない文章を書く子

・漢字テストで「字を創ってしまう」子や「偏と旁が逆になる子」

こういう子は、そもそも「正しい文」「正しい伝え方」を知らないのです。これについては正直親の責任が大きい。

「論理のカタ」を教えるにはこれ!

 

知る人ぞ知る名著。普通の学習参考書の棚にはありませんので知られていないのかもしれません。私は教材発掘のために書店に行くときは、学参の棚だけではなく、学校の教員向けの棚まで探しに行きますが、そこで見つけました。

 

 著者のドイツでの経験を基に、徹底的に論理のカタをトレーニングする本です。そのため、一見「日本語だと不自然だわ」とお感じになるかもしれません。でも、日本語として「こなれた」文は、まずSVOCをしっかり身につけたあとで「省略」していけばいいのです。

 

「まず初めに要点を言う」「説明は大から小へ」などの「カタを『実践』させる」のがここまで効果があるとは嬉しい誤算でした。小学校低学年のような説明しかできなかった子が、これをやり始めて数か月後に長編小説のあらすじをとてもわかりやすく説明してくれたときは涙が出そうになりましたよ。

ただ、この本の唯一の欠点は、自学向きではないことですね(^^;

国語が苦手な子ほど、自分の記述が合っているかどうか判断できません。

親御さんか、個別コーチがこの本を使って指導するのが最適解だと思います。

 

言わずと知れた論理エンジン。

出口先生の参考書は、正直大学受験向けの本は微妙に感じることが多いのですが(汗)、小学生向けはいいですね。


このシリーズの良いところは

・本文は長い(苦手な子向けだからといって短文にしていない

・その長い本文を区切り、ステップを踏んで内容を把握させていく

・解答解説も、問題の縮小版になっている→自学がしやすい

一応学年別になっていますが、超苦手な子の場合は、3~4年生まで戻ってやると良いでしょう。急がば回れ

 

英単語も、「類義語・反対語」まで覚えてしまった方がかえって定着しますよね。

語彙が極端に少ない子供に語彙問題集をやらせると、マジで「辞書に書いてある説明」を丸暗記しようとします。え、それって「理解」してなくね?(汗

 

対立概念で語彙を整理してある本は、高校生向けだと多いのですが、小学生向けはこの本が初めてだと思います。

 

「概念」で対比させているので、後半になるとかなり高度になってきます。

 

苦手な子だけではなく「抽象語をわかった気になっている子」にもいいですね。

ただ、多少、説明や設問が「舌足らず」なところがあるので、これまた苦手な子が自学できるかというと微妙かも。親御さんや個人コーチの指導が望ましいです。

 

2)国語は「普通」。「高得点が取れる気がしない」小中学生向け

想定レベルは

・模試で6割くらいはノー勉でも取れる

・でも「差がつく問題」が取れない

・これ以上伸びる気がしない。しょせん「国語はセンス」だとあきらめている

 

こういう生徒は、「要点をつかむ」「俯瞰する」のが苦手なケースが多いです。

国語が得意な子は、どんな長文でも「頭の中でまとめながら読んで」います。

ある要素について尋ねられるとすぐ「あの辺に書いてあったな」と記憶しているので、いたずらに全文読み直さなくてもスムーズに解ける。

 

この力をつけるには、とにかく「要約」トレーニングです。

 

ぶっちゃけ、「要約」の練習に特別な問題集は必要ありません。ただし、それは的確な個人コーチがついていれば、の話。私は、このレベルの子には一冊分本を渡し、段落ごとに一行で要約させます。非常に効果があります。でも、これってそれをジャッジする人がいないとできない勉強法ですよね(^^;

 

自学でもできる「要約トレーニング」本はこちら。

 

これも、学参の棚にはありません。教員向けの棚で見つけました。

話はそれますが、教員向けの本って部数少ないんですね…だから単価が高いんですね…

センター試験の過去問なんて凶器になりそうなくらい厚い(笑)のに千円しませんもんね。この本は割と薄いのに2000円しますから躊躇される方も多いと思いますが、マジで効果絶大ですから!

 

ゲーム感覚で「まとめるとはどういうことか」が身につきます。

 

さらに一歩高みを目指したければ、これまた「問題を作ってみる」といいです。

カタはあるわけですから、真似すればいい。

余談ですが、「文章を書く」場合は、この「逆」をやります。

「大人のための文章教室」では、「主張したいこと」に対して、どれだけ説得力のある「具体」を考えられるか、そのトレーニングをしています。

 

選択肢問題が苦手な生徒は、こちら。

 

難関向けではないです。

例文も選択肢もかなり平易ですから「難関校の高度な選択肢判別」には使えません。

でも逆に、「正答率の高い選択問題で引っ掛かってしまう」生徒にはとても良いと思います。

例文が全部ドラえもんなのは「著作権的にどうなんだろう」と気になってしまいますけれども(笑)。

 

3)国語は得意だが、「あと一伸び」の壁に当たっている小中学生向け

想定レベルは

・選択問題で引っ掛かりがち。

「あと1~2問取れてれば合格判定80いったのに」と歯噛みしている

・選択問題は得意だが記述になるとトンとだめ

・サピで言えばアルファにギリギリ入れないあたり

 

キミたちは、いっそ大学受験用の本で自学したらいいです。

自分の学年向けの本をいくらやっても、そこには突破口はありません。

だいたい、難関中学がこぞって高校生向けの文章出してきてるんですから、そのレベルの参考書やったほうが「より高い次元」から「俯瞰」できるようになります。

 

中学受験向けに書かれた本で、その次元のものはこちら。

 

 これまで何度も紹介してきているのでしつこいかもしれませんが、これぞキング・オブ・中受国語。

なのに、いまいち知名度低いんですよねえ。
学参出版社ではないからかな?

あるいは、これまた「親やコーチが読むべき本」であって「子供がこれ読んでわかるかっていうとたぶんわかんない」からかな(苦笑)。

 

国語の参考書というと、ほとんどがテクニックに走った本か、あるいはただの「解説」で「自分でできるようになるメソッド」はない中で、この本は違います。

 

「わかる」とは「イメージできるということ」という信念のもとに、まずは「絵を描かせる」トレーニングから始まります。

 

小説なんかもね、「その場面が頭に浮か」べば造作もない問題も、ひたすらたくさん問題を解かされつづけている塾漬けの子は、「文字だけ」で解いちゃう。だから間違える。原点に戻って「イメージしましょう」という本です。

 

親御さんやコーチ向けの本ですが、国語が相当できる子なら、理解できるはず。

後半の「記述」パートでは、「御三家に受かった子が最初はどんだけひどい回答を書いていたか」という実例も盛りだくさんで、「できすぎた模範解答」を見て立ちすくんでいる受験生にはその点でもプラス。

 

 

これは大学受験向けと銘打ってありますが、国語の得意な小学生や中学生なら十分読めます。そして、役に立つこと請け合い。

前述の「論理エンジン」の真逆で、設問の本文はどれも短い。

だからサクサクやれます。

「なんとなく」読んで「なんとなく6~7割」を出していた 人向け。

指示語や接続語をなんとなく読んでいた生徒はこれで開眼するのでは。

 

大学受験本ですが、キミたちなら大丈夫。

現代文の読み方がわかります。

「選択肢の選び方」も秀逸で、選択問題の「最後に残った2つ」で悔しい思いをしているあなたにお勧め。

 

あ、ただ、前半は小学生でもわかると思いますが、後半の演習編は、さすがに高校生じゃないと厳しい。前半で「読解問題とはなんぞや」「選択肢の選び方」を学んだら、あとは数年間大事に取っておきましょう。高校生になったらまた使えます。

 

4)現代文が「可もなく不可もなし」な中高生向け

ほとんど3)とかぶります。

まずはそちらに取り組んでみてください。

 

 これは、もうタイトル通り(笑)

・現代文は伸びないとあきらめている

・頭に汗を書くほど現代文を勉強したことがない

・現代文は高得点も狙えないけどそれなりに点は取れるからいいやと思っている

生徒にお勧め。

 

「なんとなく読める」けど、話が深くなるとチンプンカンプンで「まあいいや」とカンで答えている高校生諸君は、そもそも「テーマ」がわかっていないことが多い。

 

今現在、どういう対立概念があり、どういうテーマについて本文が論じているか、その土台となる「教養」が不足しているために、「文章は読めるけど何言ってるのかわからない」んです。

 

大学受験の現代文は、「教養=土台」 ありき。

とりわけ「哲学の歴史」を知らないと大きくビハインドです。

 

キーワード本はたくさんありますが、土台のない状態で文字ばっかりの本を読んでも頭に入ってこないでしょう。いずれ上位互換の本に進む必要はありますが、まずこれを読んで「現代文の背景」を理解しましょう。

 

5)超難関大を目指す高校生向け

大学ごとに現代文のカラーはまるで違いますから、一番の参考書は「赤本」すなわち過去問です。

その前段階、下準備として優れているなと感じた本を挙げてみます。

 

 「ここにこう書いてあるから答えは(ア)なんだよ」ではなく、とことん「読み解く」ことに主眼を置いた名著。この本は、ただ問題を解いて丸付けするような使い方ではもったいないにもほどがあります。むしろ、丸付けは脇に置いて、とことんこの本の解説を読んでほしい。

 

「なぜその答えになるか」が解説してある本は多いですが、「どう読むべきか」「どう読むと本文が理解できるのか」に主眼が置かれている本はほとんどありません。

 

現代文の参考書の解説ってちょっとつまんないですよね(笑)。だから多くの受験生が「答えしか見ない」んだと思います。でも、この本は「解説が面白い」。ぜひ、脳から汗が出るほど現代文と格闘してみてください。

「わかる」ではなく「できる」ようにさせてくれる名著です。

 

 前述の「現代文のテーマとキーワード」は入門。こちらは上級者向け。キーワード本はたくさんありますから好みで選べばいいんですけど、学参の棚にあるキーワード本って、なんか「暗記しろ」と言わんばかりで結局頭に入ってこなかったりするんですよね。この本は、暗記のための本ではないです。寄り道話も結構多いしね。でも、その寄り道が、かえって思考力を高め、頭にしみこんでくるんですよ。暗記本は、読んでいて「自分で考える」ことが少ないのですが、この本は読んでいると自然に「自分で考え」るようになります。手元に置いて、何度でも読むと良いでしょう。

 

 

東大志望してない人にも超おすすめ!!!!

東大の現代文は、かなり平易です。

レトリック多用した著者の自己満足的難解な文章は、まず出ません。

わかりやすい文章を「正しく」読んで、「論理の筋道の通った記述をする」練習に、この本は超おすすめです。

 

「模範解答が『大人げない』問題」についてはさんざん書いてきましたが、この本は「高校3年生ならここまで書ければOK」という観点で模範解答が書かれているのが超プラスポイント!

 

選択肢も、東大は「意地悪く」ありません(笑)。

選択肢自体が難解なセンター試験や一部私大の現代文は、別途対策する必要がありますが、「高度な文章を正しく読む基礎作り」には、実は東大赤本が最適だとすら思っています。

 

評論文の参考書はあまたあれど、意外と小説読解の参考書って少ないですよね。

あったとしても「ここにこう書いてあるからこう」みたいな。

いやいや、小説って、まずはその小説が書かれた時代背景とか、その作家の傾向とか、そういう「教養」なしには読み解けない場合があるんですよ。

そのあたりをズバリ書いてくれているのが、この本です。

「設問の意図」まで書いてある。

小説読解について「ひとつ上の次元」から書いてあるこの本は、唯一無二の価値があるとすら感じています。

 

今日は長くなりました(汗)

いかがでしたでしょうか。

つかみどころのない「国語という科目」についての悩みは、「理数ができない」とはまた別ですよね。理数なら、「できない理由」も「なにをすべきか」もわかりやすい。国語の限界突破のヒントになれば、幸いです。