とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

動画中毒の子供たち~「ウチは大丈夫!」は危険

ここ数年「子供が動画中毒で困る」という相談が急増しています。

(「ウチは大丈夫!」は残念ながら通用しません。これは最後に書きます)

 

さて、急増している相談とは。

たとえば

もう6年なのに、隙あらばタブレットYouTubeを見ている、取り上げると暴れる。

中高生は自分のスマホを食事中でも手放さない、取り上げると暴れる。

 

取り上げると暴れる、までいくと完全な中毒ですね。

ドラッグと一緒ですね。

なぜ、そうなる前に止められなかったのか。

手厳しいことを言いますが、これは完全に親の責任です。

 

中毒になってからでは遅いのです。

 

ご相談に来られるご家庭には共通点があります。

*幼少期に「タブレット育児」をしていた

*親自身が常にスマホを手にしている

*「いますぐデバイスを取り上げてください」と言っても実行しない(できない)

 

幼児期に「YouTube見せとくと静かだから」と安易に与えるご家庭非常に多いんですけど、そのツケは小中高で払わねばなりません。

 

面談のときに無意識に片手でスマホを握っているお母さん、ものすごく多いです。子供は親をよく見ています。親がやめられないものを子供にやめろと言って聞くわけがありません。ご両親が「歩きスマホ」「寝ながらスマホ」していないか、今一度振り返ってみてください。

 

大人のスマホ中毒もたいがいですが、さすがに大人は「暴れる」はないですよね(一部除く)。では、なぜ今の小中学生はスマホタブレットを取り上げると暴れるか。それは、「自我や理性が育つ前にデバイスを与えてしまったから」です。自我が確立すればするほど、躾けは入りません。安易に手を出して、離脱するのに壮絶な苦しみが伴うのもドラッグと同じですね。

 

我が子をネット中毒にしないためには、まず幼少期に安易に触らせない、親自身もネットとは節度ある付き合いを心がける(歩きスマホなんてもってのほか)ことが大事ですが、もし不幸にしてその時期は過ぎてしまい、すでに子供がYouTube中毒になっていた場合はどうするか。

 

たとえ一時的に家が荒れようがどうしようが、断固たる決意を持って&心を鬼にして「取り上げる」しかないのではないでしょうか。

 

多くの親御さんは「でも&だって」で結局実行されませんけれどね。

「取り上げると家を破壊するから」と仰いますが、子供が中毒から抜け出せるなら壁の一枚や二枚、安いもんじゃないでしょうか。「暴れるから与える」って、まさにドラッグ中毒患者にドラッグ渡すのと同じですよ。

 

そもそも、どうして小学生が自由にタブレットを触れるようになっているのか私には理解できません。たしかに、子供はそういうところだけは知恵が働きますから(笑)、完全にコントロールするのは手間がかかります。でも、その手間を惜しまないご家庭では、きっちりコントロールできています。

 

今からでも遅くはありません。

「無理」「大変」と手間を惜しまず、大事な我が子を中毒から救いましょう。

 

最後に「ウチは大丈夫」は危険、という恐ろしい事例をお話します。

数年前のことです。

かなり地頭の良い生徒さんで、授業時の飲み込みは速い、でも最後まで偏差値は伸びなかった子がいました。第一志望はおろか、塾から太鼓判を押された安全校にも不合格でした。実は、一人の時はずーっと動画漬けだったことが後から発覚しました。さらに悪いことに、夜中ベッドの中でもタブレット見放題だったので常に睡眠不足でした。その子だって、もし物理的にデバイスを取り上げられていたら、憑き物が落ちたようにネットのことを忘れられた可能性が高いです(スマホを手放せない大人だって、充電できない場所で充電切れたりすればストンと諦められるのと一緒です)。

「なぜもっと早く気づかなかったのか」と放心されていたお母さんの表情が今でも忘れられません。

 

中毒患者は、ドラッグを切望するのと裏腹に「止めてほしい」とも思っているのです。

なぜなら「自分では止められないから」です。

 

「ウチは大丈夫」と思わないでください。

早く寝ているはずなのになぜかいつも眠そう。

いつもソワソワしている(ひとりになりたがる)。

こういうケースは、ほぼ自室で動画見ていると思っていいです。

自室で長時間勉強している割には、いつまでも同じ基礎問題を間違えるという場合も動画漬けの可能性は高いです(これは、ほかに原因がある場合も多いので断定はできませんが)

 

小学生には、まだ「自分で我慢する」ことは無理です。

*どんなに子供が暴れようと、自室にタブレットは持ち込ませない

*勉強はリビングでさせる

*共働きなどでリビング学習が無理ならば、親の不在時にはPCやタブレットが使えないようにしておく(金庫などにしまう、あるいはWi-Fi切っておく、など)

 

「スティージョブズは我が子にiPadを触らせなかった」のです。