中学受験の塾選び。
Youtubeやブログなどで比較されていますが、なんというか…比較するポイントがどれも「大人基準」だなあと残念に感じることが多いです。
親御さんが気にされるのは、まずは合格実績、ついで年間費用かな。
次が、親の手間がどれだけかかるか。
その次が塾の雰囲気(体育会系とかドライとか)。
もちろん、それらも大事なポイントだと思います。
でも、私は一番大事なのは「テストの内容」と「テキスト」だと思っています。
私の知る範囲で、それらの違いを書いてみたいと思います。
1)サピックス
言わずと知れた「分冊」形式。
毎回新しいことをやるのが小学生に良いという触れ込みですが、まあそれは気分の問題だと思います(笑)。たしかに小学生は新しいものが大好きですからね。
また、小学生は目の前のことにしか集中できないという理由もあるそうです。
でも、それって小学生の頭脳を馬鹿にしすぎじゃないかな?と私は思う。
自分の子供の頃を思い出しても、教科書が配られたら速攻で最後まで読んでしまったり、あるいは先でどんなことやるのかな?とつまみ食いしたりしていました。
そうしている間に、自然と頭の中に「学問の体系」が育っていったと思っています。
「目の前のことに『だけ』集中させる」というのは、馬を走らせるときに目に覆いをかけるのにそっくりですね。
たしかに、「効率」は良いと思います。
でも、このやり方が通じるのも小学生までなんですよね。
サピックス中学部が結果で早稲アカに大きく水をあけられているのはそこをわかっていないからだと思います。
あと、社会と理科は分冊にはまったく向いていないと思いますよ。
テストはαから最下位クラスまでまったく同じものを解くので、中下位の子はテストのたびにメンタル削られると思います…。
2)四谷大塚
これまたいわずとしれた予習シリーズ。
今般大幅改訂されたようですね。
個人的に、問題の途中でページまたぎをするのが見づらいなあと思っています。
算数はチャート式のように新しい問題は新しいページ、が頭に入りやすいのでは。
解説部分はやや見づらいのですが、問題のページは非常にやりやすいですね。
基本・練習・発展がきっちりわかれていて難易度がわかりやすいのが良いです。
また、四谷大塚はクラスによってテスト内容が変えてあるのが良いですね。
基礎クラスなら、まず基礎の問題をきっちり取りに行くことが基本。
でも、サピのように全員同じ問題が配られると、どうしても難問にも手をつけてしまう。そして、返却されたテストは半分以上真っ白。これはメンタル削られます(^^;
テスト内容がS,C,B,Aとわかれているのはとても良いと思います。
そして、他クラスのテストも実費を出せば買えるなど、自社のテキストを門外不出にしていないところは非常に好感が持てます。
過去問データベースではいつも大変お世話になっております(笑)。
テキスト自体は教科書的=標準的で、ぶっちゃけ市販のもので代用可能ですが、算数の「四科のまとめ」は非常に良いです。難易度は超難しいわけではありませんからこれ一冊で難関対策になるというわけではありませんが、5~6年生の春休みに一通りやって「穴」を見つけるのに最適です。薄いのでさっさと終わり、達成感が得られます。
3)日能研
ここのテキストとテストには、指導側のポリシーを強く感じます。
「解ければそれでいい」ではなく
「深く考えて欲しい」というポリシーです。
特筆すべきは、「栄冠への道」の中にある「研究」のページ。
「解法」や「公式」を教えて終わり、ではなく。
「この解法のどこがどんな風に良いのか考えてみましょう」
「どうしてこの公式になるのか考えてみましょう」
というページが「発展」扱いではなく問題演習に行く前のページに挟んであるのです。
これは、「生徒に『自分の頭で考えて欲しい』」という思いの表れだといえます。
たしかに、これをやると「効率」は悪くなるでしょう。
中学受験くらいの内容だと、「なぜそうなるのか」をじっくり考えさせるより、「教えた解法を使えるようにさせる」ほうが手っ取り早いです。
でも、それをやると目先の点数は上がるけど「考えない子」になるんですよね(^^;
「(解法を)習ってないんでできません」と言い放つ小学生のいかに多いことか。
そうやって「解法暗記」で中受を乗り切っちゃうから、高校数学で詰むわけです。
さて、日能研のテストで特筆すべき点。
こちらも、クラスによって「ここまで解こう」というのが分かれています。
さらに、これはサピにも四谷にもない点が
・毎回記述問題がある(解き方を書く)
・「問題を作ろう」という問題がある
これは素晴らしいと思いますね。
私自身、授業で「問題を作る時間」を取り入れていますが、生徒の反応ははっきりわかれます。
・問題を作るのを楽しむ子
・問題を作るのが苦手だけど、少し補助するとできる子
・「問題を作ってみよう」の意味が分からない子
この3つ目が非常に問題で、サピ偏差値60を叩き出していても、まったく問題が作れない子、作ろうとしない子、結構多いです。
彼らは「出された問題を次々に打ち返すのが勉強」だと思っていますね。
ぶっちゃけ言って、
問題を作れるかどうかは思考力のリトマス試験紙になります。
好奇心のリトマス試験紙にもなります。
本来、子供というものは問題を作るのが好きなはずなんです。
新しいことを知ると、親にクイズを出したがる。
「短時間で大量の問題を解かせる」という今の受験塾の勉強法は、子供たちの能力をかえって低める気がしてなりません。
蛇足ながら、問題を作れるかどうかは講師のリトマス試験紙にもなります(笑)。
三流:出された問題の解法をマニュアル通りに解説できる
二流:問題集や塾のテキストの「別解」を提示できる
一流:その子にあった問題をその場で作れる
話を日能研に戻しますと。
テキストにもテストにも、「学ぶとは本来こういうものだ」という熱い思いを感じます。電車の中吊り広告の「四角い頭を丸くする」にもそれは現れていますね。
ただ、そのやり方が「促成栽培」を望む今のマーケットに合っていないため、残念ながら入塾者が減少→「実績」がふるわない→入塾者が…というスパイラルなのかもしれません。また、テキストの理念が素晴らしくても、現場でそれを存分に発揮できていないということもあるかもしれません。
でも、「学問」が好きな私としては、日能研のようなテキストとテストに溢れる理念をわかるご家庭や、それを通じて「学問の面白さ」に目覚める小学生が増えてくれたらいいなあと思っています。
あ、念のために言っておきますが日能研の回し者ではありませんよ(笑)。
(このブログを最初から読んでくださっている方にはおわかりかと思いますが)