とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

【和文和訳】という勉強法はいかが?~国語・現代文を「テキトー」に済ませている諸君へ~

今日はちょっと嬉しいことがありました。

「ミコトの授業を受け始めてから、学校の授業を面白く感じるようになった!だから学校の授業も馬鹿にせず真剣に受けるようにしたら、たくさん『発見』があった!」

と言われました。

コーチ冥利に尽きるとはこのことですね。

私は常々「コスパ重視の受験ノウハウ」が大嫌いです。

そもそも学問においてコスパって何ですかね。

わかりやすい先生が良い先生とは限らないんですよ。

かの鷲田清一先生も仰っている通り「わかりやすいはわかりにくい」かもしれません。

わかりやすい授業は、生徒を「わかった気にさせるだけ」かもしれませんよ。

この話は長くなりますので、また別の機会に。

 

さて、今日は現代文でお悩みのみなさんに向けて、ひとつの勉強法のご提案です。

 

ズバリ和文和訳」です。

 

なんじゃそりゃ?と思われたことでしょう。

そりゃそうです、だって私がさっき作った造語ですから(笑

 

現代文、難解ですよねえ。(中受でも、最近は「これは小学生には無理だろう」という文章がガンガン出されていますね)

 

今回ご提案する【和文和訳】という方法は、国語の苦手な小学生にはちょっと難しいかもしれません。(逆に、国語が得意だけど、あと一歩!という子。渋谷幕張や豊島岡が出すような、高校生でも難しく感じるような問題を解きたいという子にはお勧め)

 

まず、何度も書いていますが、国語が苦手な場合は「問題」をたくさん解いてはダメです。それでは絶対と言っていいほど読解力はあがりません。本文が理解できていないのが原因なのに、問題だけたくさん解いても本末転倒。

 

まずは、ムズカシイ文章をしっかりじっくり読みましょう。

 

で、ですね。

よく、「要約が読解力向上に役立つ」と言うじゃないですか。

その手の本も結構出ています。

これは、「本文がだいたい理解できている」場合には有効です。

でも、本文の5割くらいが「何言ってんのかわかんない」場合には、要約は禁じ手です。

なぜなら、「半分くらいわかんなくても『要約っぽいもの』は書けてしまう」からなんです。

 

恐ろしい話ですが、それなりに要約を書けていても「さっぱりわかっていない」ことは十分ありうるのです。なぜなら、要約は「ここが大事っぽい」と感じたことを「つなげれば」要約になってしまうからなんですね。

 

現代文のテクニック本って結構あるじゃないですか。

「『たとえば』のあとは消していい」

「『しかし』のあとが著者の主張」

とかね。

だから子供たちは、「よくわからないけど『キーワードっぽいもの』をつなげて『それっぽい』文章を書く」ことで満足してしまって、本当にその文章を理解することを放棄してしまうケースが多発するわけです。

これらのテクニックには、断固として「否」と言いたい。

 

では、「しっかりわかる」ためにはどうしたらいいか。

そこで和文和訳】です。

 

英語もね、実は「逐語訳」が一番チカラが付きます。

最近は「大意がわかればいい」という教育方針なようですが、それは間違ってますね。

わからない部分を見なかったことにして、わかる部分だけテキトーに読み繋いで

「大意(笑)」とやらが分かった気になっても

それは文章を読んだことにはなりません。最近の中高の英語教育がこっちになってて非常にヤバいなと思っているのですが、これまた長くなりますのでまた今度。

 

さて【和文和訳】ってなんぞや。

それは、

一見わかりにくい本文を、わかりやすく書き直すこと

(私は大人の文章教室では「リライト」とも呼んでいます)

わからない文章を飛ばすことなく、一文一文「わかりやすく」書き直す。

これは、本気でガチで本文と「格闘」しないとできません。

「要約」は、それこそ自分の書いている文章の意味がわからなくても書けてしまう。

そこが、【和文和訳】と【要約】の違いです。

 

大学入試の現代文では、レトリック多発の文章だらけですね(汗

こう言ったらなんですが、著者が自分に酔ってあえて難しく書いているようにしか思えない文章も多いです。

 

だいたい、みなさん一文が長すぎるんだよ(笑

一文が長いと頭良く見えるからなのかな(笑

養老先生を見習っていただきたい。

さはされど、著者のみなさんは別に大学入試のために文章を書いたわけではない。

その方の寄稿された文芸誌なり学会誌では、レトリック多発かつ一文が長い超難解な文章でも理解されていたのでしょう。

 

で、ですね。

こうした難解な文章を「そのまま」理解しようとしても普通は無理です。

「余計な修辞」が多いから。

だから、私のレッスンでは生徒に黒マジックを持たせています(笑

著者の方には申し訳ないけど、「余計な飾り」を全部黒マジックでいったん塗りつぶして「理解」させる。

そうして意味が理解できたら、もちろん消す前の本文をもう一度読む。

 

英文和訳では、まず「SVOC」をしっかり見極めますよね?

でも、母国語だからなのか、難解な長文をそうやって分析しないでテキトーに読むからわかんなくなるんです。

 

1)SVOCを見つける

2)それ以外はいったん消す

3)骨組みを書いたうえで、2)で消した「修辞」を(必要なら)戻す

この流れで、難解な日本語が驚くほどシンプルに「見えて」くるはずです。

 

「やたらと長く」「持って回ったカッコつけた文章」は、一度リライトすることで、あるいは英語を理解するときのようにSVOCを分析することで、格段にわかりやすくなります。

 

ここで例に挙げるのは大変に失礼ですが、それでも私はこれを例に挙げずにはいられない(笑)。2004年センター試験で出題された、リービ英雄「thereのないカリフォルニア」の一文です。

 

「四季がはっきりしていることが現実にとっても文学にとっても重要な特徴であり続けてきた日本から来ても、あるいは日本以上に四季の変化が豊かなアメリ東海岸から来ても、はじめて体験するカリフォルニアの自然は、実にショッキングなものである」

 

うーん。

長すぎるよね(笑

もうね、この書き出しを読んだだけで、半分の受験生が嫌になったと確信する(笑

 

これを「リライト」してみましょう(もちろん、今から私が書く文章が「ただ一つの正解」ではないですよ。要は「自分がわかるように」書き直そうということです)

 

「日本では、四季がはっきりしている。それは現実にとって重要なのはもちろんのこと、文学の上でも重要だ。そんな日本以上に、アメリ東海岸では四季の変化が豊かである。そういった、四季のはっきりした国から来ると、カリフォルニアの自然はかなりショッキングである。」

 

さらにシンプルにすると

「日本やアメリ東海岸のような、四季の変化がはっきりした国から来ると、カリフォルニアの自然はかなり異質でショックを受ける」

 

どうでしょうか。

私の文の巧拙は置くとして(汗)、はるかに理解しやすいのではないでしょうか。

なぜ元の文章がわかりにくいかと言うと、ひとえに「一文が長い」からです。

超個人的な見解を言わせていただくと、養老先生のような「一文は短い、しかし言いたいことは非常に高次元」な文章が良い文章だと思うのですが。

なんでしょうね、一文が長くなる理由は

・しゃべるように書いている

・わかりにくいほうが頭よさそうに見えるから長くする

・短くするスキルがない

と、超個人的には考えています(笑

 

長く、わかりにくく書かれた文章を、そのまま理解しようとしてはいけません。

和文和訳】して、「自分にわかるように書き直して」から理解しましょう。

ぶっちゃけ、大学受験に出されるような文章を書く方々は、高校生に向けて書いてはいません(苦笑)。レトリックまぶしまくった、持って回った言い回しの、一文が3行にわたるくらいの文章を理解する「同業他社」すなわち学会に向けて書いています。

だから、そのままでは高校生がわかるわけがないんです。

 

ぜひ、「一文ずつ(英語のように)和訳」してみましょう。

そうすると、「自分がどこを理解していなかったのか」がわかります。

ざっと読んでテキトーに要約、テキトーに選択肢選ぶ、では見えないことが見えてきます。

 

「わかんねー!」という難解な文章は、(日本語だからとテキトーに読まず)外国語だと思って、一文ずつ【翻訳】してみましょう。