とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

なぜ人目が気になってしまうのか

小中高生を教えていると、

自意識過剰なため学力が伸びにくいケース

に、よく出会います。

 

1)なぜ自意識過剰がなぜ学力の伸びの障害になるのか

それは

・「間違え」を過度に恐れる

・チャレンジングな志望を避ける

・「落ちて恥をかく」ことを恐れ自分を追い詰める

・人目が気になりすぎて勉強に集中できない

ことに、簡単に繋がるからです。

 

間違えることを過度に恐れていては「解ける問題ばかり解く」ことになったり、「質問ができない」ことになったりします。

チャレンジングな志望を避けることで、資質が高くても伸ばせないこともあります。

逆に、落ちたら恥をかくという恐れが学習を阻害することも多いのです。

人が自分をどう思っているか気になりすぎて勉強が手につかない生徒もいました。

 

具体的に言いますと

・答えに自信がないと小声になる

これは「バツ」に対する過剰の怯えであり、これに関しては講師が「バツは全然まずいことじゃない」というと、気にしなくなるケースが多いです。

 

一方、自分がどう見られるかの自意識過剰は、結構根が深いですね。

具体的な行動としては

・オンライン授業だと顔を隠す、手元を見せない

・対面授業だと、下を向いて黙ったまま

という行為になります。

オンライン授業で「なんで顔を隠すの?」と聞いたら「髪の毛を切りすぎて恥ずかしい」とか「にきびが出来ていて」という答えが返ってくるのですが、彼らは盛大な勘違いをしている。私たち講師は、生徒の容姿の良しあしなどまったく気にしない。「表情」は気にしますが。

2)実は他人は「私/俺」のことなど目に入っていない、のだが

そういう子に、私は尋ねます。

「あなたは、今日学校から帰ってきて、学校の誰かのことを思い出したか?」と。

ほぼ全員が首を横に振ります。

そう「人目が気になっている子」ほど、「他人がどうしているか」には目が向いていないのです(意識が自分にばかり向いているのだから当たり前ですね)。

ならば、同じように「他人」も「私」のことなど気にしていないはずです。

そう、

若いうちは誰もが「自分を映す鏡『しか』」見ていない

のです。

俗に言う、「自分の顔が気になるのは自分だけ」というやつです。

そういうと、いったんは子供たちも「あ、そうか」と納得します。

でも、それで自意識過剰気味の子が「人目を気にしなくなる」かというと、そんなことはありません。

なぜ彼らは、「自分が他人のことを覚えていないように、他人も自分のことなど覚えていない」と理屈ではわかっても、それでも人目を気にし続けるのでしょうか。

 

3)「他人が自分のことを目にも入れていない」ことが耐えられないから

自分が他人に関心がないのと同じくらい、他人も自分には関心がない。

それは理屈ではわかる。

でも、そのこと(人が私を見ていないという事実)に耐えられない人が多い、ということなのだと思います。

 

アドラー流に言うと、彼らは

「他人に私を気にしてほしい」

と思っている。

だから、どんなに大人から「人はそれほどあなたを見ていないから安心しろ」と言われても、納得できないというか「人が自分を見ていない」ことを認めたくない。

「人は私など見ていない」と認めたくないから

「人は私を気にしている」ということにする。

その結果、人の目が気になってしかたなくなる。

「人が自分を見ていて欲しい」と思うからこそ、「人目を気にしない」ということができない地獄に陥る。「誰も俺/私をとりたてて注目していない」と思えば楽になるのですが、逆に若い人にとってはそれ(他人が自分を見ていないこと)は耐え難いことなのでしょう。

「人からどう見られるか」ではなく「自分が世界をどう見るか」に軸足を置けると人生はとてつもなく楽になり、ワクワクの連続になるのですが。。。

 

4)「他人は3秒後には別のことを考えている」のに

 

学校や就職先を「見栄」で選ぶ人は実に多いです。

就職人気ランキングに「誰でも知ってる会社」が多いのも、それが理由です。

実は「B to B」つまり一般消費者は知らないけどスゴイ会社、は山ほどあるのですが(そして実は給料や待遇も一般的な認知度が高い会社よりも良かったりするのですが)、多くの学生は「B to C」すなわち「誰でも知ってる会社」をまずは目指します。

なぜなのか。

それは

「あそこに入るなんてすげえ!」って言ってほしいから

なんですね。

 

私は以前いわゆる「そういう会社」でリクルーターをしていたことがあります。

そのとき、応募者に言っていたこと。

「就職して『すげえ』と言ってもらえるのは一瞬。結婚式と一緒だよ」

たとえば「すごい人」と結婚したとき、結婚式に参列した人はその場では称賛するでしょう。でも、参列者は帰途につくころには、もうそのことなど忘れています。

「人から『すごい』と言ってもらえる」ことを自分の基盤に置くと地獄です。

なぜなら、人は「すごい」と「言い続け」てはくれないからです。

すごい、と言ってくれるのは「入ったときだけ」です。

 

逆に言うと「落ちて恥ずかしい」なんていうのも妄想だとわかるはずです。

ぶっちゃけ、子供に実力と乖離した学校を目指させる親御さんは「落ちたらママ友に馬鹿にされる」と気にされている方も多いですが、気にする必要ゼロです。

マジでゼロです。

なぜならば、ほぼすべての受験生の親が気にしているのは自分の子供のことだけだからです。あなたの子供のことをどのママ友も気にしてはいません、安心してください。

たまに、マウント取ってくる迷惑な相手もいるでしょうが、それはそのお子さんが「行った先」ではいろいろ大変(まあぶっちゃけ言うと深海魚)だからこそだと思いますので、マウントしてくる馬鹿な相手など気にする必要はまったくありません。

そういう人、つまり自分より「格下」を見つけて攻撃せずにいられない人というのは、その人が今いるカテゴリの中で「下」だからなのです。むしろ、温かい目で見てあげてください(笑)。

 

余談ですが。

東大生と会うと「馬鹿にされる!(汗)」と恐縮される人が多いですが、マジでそんなことはありませんので安心してください。私を含め、東大生は「ずば抜けた天才」を間近に見ているため、むしろ「自分は落ちこぼれだ」と思っているくらいです。そして東大生はピュアな人間が多いので、むしろ「自分は勉強『しか』できない」と謙虚なタイプが多いですね、経験上。東大卒だけを錦の御旗にして、非東大卒を馬鹿にするやつがいたら、そいつは「東大で落ちこぼれて東大だけが『よすが』」の人間なので、生暖かく見守っていただけたらと思います(笑)。

5)「私」を注視する他人はたったの3種類

若いうちは、「みんなが自分を見ている」気がするものです。

でもそれは幻想です(笑

たしかに、あなたに注目している「他人」はゼロではありません。

・親や上司、あるいはチームの仲間など利害関係のある相手

・あなたを好きな人

・あなたを嫌いな人

この3者は、たしかにあなたの一挙手一投足に注視していることでしょう。

利害関係のある相手はあなたに注目しているでしょうが、人の評価は自分にはどうにもできません。なぜなら、それは「相手の気持ち」だからです。つまり、気にしても仕方がありません。

 

あなたを好きな人があなたに注視するのは当たり前です。基本的に「アバタもえくぼ」でプラスに評価してくれるのですから、過度に気にする必要はなし。

 

そして、「あなたを嫌いな人」。

これは、あなたがどういう行動をしようとあらさがしをするだけなので、気にするだけ損です。

 

これを言ったら身もふたもないですが。

「好きな理由」とか「嫌いな理由」とか、全部「後付け」なんですよ。

「好き」「嫌い」という感情が先に湧いて、その後で「理由を探す」のが人間です。

男女の恋愛、もっと言えば結婚離婚を考えたら自明じゃないですか(笑)。

付き合う前、結婚する前は「好きな理由」だった事柄が、嫌いになった後は「嫌いな理由」になるんです(笑)。

特に、別れる前というのはそれが顕著ですね。

「別れたい」が先にあって、その後で一生懸命「嫌いな理由」を探して自分を正当化する、それが人間。

 

つまり、「人があなたをどう思うか」なんて気にしてもしょうがないんです。

それは、相手が勝手に決めます。

こちらにはどうしようもない。

 

あ、ただ、「人から嫌がられる行動=他人に明らかに迷惑になる行動」をしてしまっているのが明白な場合は、それを改めるのはもちろん大事です。「人目を気にしない」=「傍若無人、ルール無視」ではありませんからね。

 

自意識過剰な若い人たちにぜひ気づいてほしいこと。

それは

「みんな」に好かれることなど不可能だし

その必要もない

ということ。

自意識過剰な人ほど、「自分を嫌いな人を振り向かせよう」と考える傾向があるように感じています。うん、そんなことは無理。だって、相手は「まず」あなたを嫌いなので。何がきっかけかは知らないけど、最初に「嫌い」がある。あなたを「嫌おう」として、悪い点を探そうとしている。そんなのにまともに向き合うだけ無駄。

理不尽だと思うかもしれないけど、あなたにだって「なんか嫌いな相手」は山ほどいるはず。あなたがその人たちを嫌いなように、あなたを嫌う人もいるというだけの話。

あなたは「他人」を自由に「嫌う」のに、あなたは「嫌われたくない」というのはちょっと勝手だよね(笑)。

人間だから、というか、生き物は「相性」ってのがある。

どっちが悪いわけじゃなく、好き嫌いの感情は湧いてしまう。

だから、嫌いな相手や自分を嫌ってる相手とは、とりあえず一定の距離をとるのが吉。

そのうち、何かのきっかけで気分が変わることもある、くらいに構えておいた方が楽に幸せに生きられると思います。

 

ただ、これらとは別に「自衛」をしなければいけないケースもあります。

あなたを「好き/嫌い」が高じすぎて、ストーカー行為に及んだり、逆に迫害行為(いじめという言葉は嫌いなので、迫害と言います)に及んだりするケースです。

これらの場合は、あなたがスルーする=気にしないだけではどうにもなりませんので、信頼できる第三者に一刻も早く相談しましょう。

 

6)まとめ:受験においては

他人は自分の(あるいは自分の子の)合不合しか気にしていません。

また、どこに受かろうと、人が褒めてくれるのは一瞬です。

あえて厳しい言い方をしますが、あなたがどこに受かろうと、他人はまるで気にしていないと言うことです(3秒くらいは話題にするかもしれませんが)。

そして、「人があなたをどう評価するか」はあなたにはどうしようもできません。

なので、気にする必要はゼロです。

「人からどう思われるか」を一切気にせず、志望校を選び、そしてそこに向けて「自分の満足のために」邁進しましょう。