とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

子供のスケジュールを「パンパン」にしていませんか?

わが子のスケジュールに30分「すきま」があると気になる―――そんな親御さんは要注意です。

というか、危険水域に来ていると思います。

 

このブログは「本音ブログ」ですが、矜持として現在~数年前に担当している生徒やご家庭のことは書かないと決めています。ですからこれから書くことも相当昔の話ですが、似たような風潮は年々強くなっているのを感じます。

 

 

1)家庭教師のある日に、直前までイベントを入れる親

どうも、いつもと生徒の様子がおかしい。

普段は集中している子が、ボーっとしている。

普段から心ここにあらずタイプなら、授業をできる状況ではなくなっている。

こういうとき、ほぼ例外なく「実はプール(その他イベント)に行っていて、さっき帰ってきたところなんです」という答えがあり、ずっこける(苦笑)。

猛者になると、旅行から帰ってきてすぐ家庭教師、という例もあった。

 

子供はイベントで全力を使い果たすもの。

余力を残すという発想ができるのは大人だから。

全力を使い果たしてきた子供をシャキッとさせて授業に集中させろと言われても無理ですし、ヘロヘロの子供をコーチに任せることがいかにおかしいか理解してほしい。

 

2)塾のある平日に家庭教師を入れる

これは、受験学年かどうか、あるいは本人がどこまで積極的かによって評価はわかれる。受験学年で、かつ本人も「塾で生じた疑問をその日のうちに解決したい!」と積極的ならば、同日に家庭教師を入れるのはプラスに働くだろう。

 

しかし、非受験学年、あるいは本人が受験にそれほど積極的でない場合、平日に塾のあとに家庭教師を入れるのはやめたほうがいい。

 

不思議でならないのは、多くの親が「学校」をカウント外にしていることだ。

だから、塾の日に家庭教師はちょっときついかもしれないけど大丈夫、と判断してしまう。でもそれは「ダブルヘッダー」ではなく「トリプルヘッダー」だ。

子供たちは、学校ですでに6時間(拘束時間で言えば8時間)勉強してきている。

その後に塾、さらに家庭教師。

ブラック企業も真っ青ですね。

 

3)結果:子供はヘロヘロ。だが…

本人に覚悟と「何が何でも〇〇校!」という強い志望があるケース以外で、イベントと家庭教師、あるいは塾と家庭教師は無謀。

そういうとき、なんとか2時間なんとか乗り切ることしか、子供の頭には浮かばない。

こんなときは、思い切って授業を休みにするか、あるいは半分にして仮眠をとってからのほうがよほどパフォーマンスはよくなる。

講師としては、どんなに工夫しようが目の前の子供の頭を授業が素通りしているのがわかるので困ってしまう。

ヘロヘロの子供に授業をしても効果がないのだが、子供のスケジュールをパンパンにしてしまう親御さんというのは、そんな状態でも講師ならしっかり授業をできて当たり前だと勘違いしているケースが多い。

さすがに、それは私でも無理ですね。

若い頃は「私がなんとかしなくちゃ」と責任を感じていましたが、最近は「体調を整えておかなかった方が悪い」と考えるようにしています。

 

4)パツパツに「予定」を入れてしまうタイプ

子供のスケジュールをパツパツにしてしまう親御さんは、親御さん自身も「じっとしていられない」タイプが多いように感じる。

「何もしないでいると損した気分になる」人は要注意。

おそらく、子供さんはもちろん親御さん本人も、タスクを今の3割くらい減らすべき。

それが適正な量。

 

5)「相手が小学生」ということを忘れている

高校生くらいになって身体が出来上がってくると、多少の無理はききます。

(それでも「多少」ですが)

大人は、さらに無理がきくことでしょう。

でも、そのノリで子供のスケジュールをたててはダメ。

子供は大人である自分の3割できれば上出来、と考え、大人の3割程度の密度でスケジュールは立てるべきでしょう。

なぜかというと、大人は身体が出来上がっていて無理がきくということもありますが、もう一つ、大人は「手抜き」ができるからです。

身体と脳を守るために、上手にエコモードで動けます。

子供にはそれができません。

たまに、常にエコモードの子がいますが、そういう子は朝から晩までMaxを求められ続けた結果、本能的に「手抜き」を覚えてしまったのです。不憫ですね。

 

6)「何もしない時間」=「無駄」だと考えている

子供が、あるいはパートナー、はたまた他人がクルクルと働き続けていると満足するタイプの方もいますね。逆に、他者が「ほっとひといき」入れたりしているとイライラしてしまうタイプ。

ここまでくると、マジでブラック企業の経営者と心理は同じですね。

 

機械ですら「休ませる時間」は必要です。

そうでないとオーバーヒートしたり寿命が縮まったりします。

ましてや、我々は生きた人間です。

そして、脳は臓器なので、詰め込みすぎると知識の「下痢」を起こします。

適度に休む・遊ぶことで、かえって定着がよくなるわけです。

 

7)「スケジュールが真っ黒」のデメリット

疲れて、パフォーマンスが下がります。

学校にしろ塾にしろ、はたまた家庭教師の授業にしろ、「時間つぶしのアリバイ」になってしまいます。そういうときは、何も学んでいない。ただ形だけこなしただけ。

満足を得られるのは、そういったスケジュールを与えた親御さんの心だけです。

 

さらに怖いことに、

子供を「常時エコモード」にさせてしまいます。

 

常に行き過ぎたノルマを与えられている子や、ノルマを終えたらすぐ「新しい課題」を与えられる子は、わざとノロノロやるようになります。

どうせ時間が来るまで休ませてくれないんだから、だったら手を抜いて量を減らそう、と考えるわけです。

なにやら、日本のサラリーマンの「ダラ残」に似てますね(苦笑

もし専業主婦の方なら、夕飯が終わってほっと一息と思ったとたんに「暇なら掃除したら?」「次は〇〇やって」と言われた場合を想像してみましょう。怒り心頭なんてものじゃないんじゃないでしょうか(笑)。そういう毎日が続くと、「わざと家事が終わらないようにゆっくり」しませんか?子供も同じことです。

 

ダラ残で常時エコモードになった子供というのは、本当にスパートをかけなければいけない時期が来てもスパートがかかりません。これが一番怖い。

また、こういう子は計算がなかなか速くなりません。文章を読むのも遅いです。なぜなら、速く終わると親がすぐ次のノルマを与えてくるからです。

わが子を「時間切れを狙う子」にしないためにも、過密スケジュールや過剰なノルマは一度見直してみませんか。

 

8)蛇足:休み時間のない塾って

こうして考えてみると、休み時間のない某大手塾は、「趣味は勉強!!」のタイプ以外には生理学的に無茶だなと感じますね。

勉強が好きでしょうがないタイプは、「数学での脳の疲れを国語でリフレッシュ」みたいなことを平気でできますから、まあそういう子にはいいんでしょうが。