とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

【これから講師になろうと思っている方へ】講師業は「無理ゲー」ではない

なんか面白いブログさんを見つけました。

jhs-examination.jp

人様のブログを見て「違うなあ」と思っても自分のブログでそれを書くのはなんだか陰口をたたいているようで卑怯な気がしますので、自分の矜持としてそれはやりません。

ですが、同業者と言いますか、「これから講師or家庭教師を稼業にしていこう」と考えている方向けにプロ家庭教師は決して「無理ゲー」ではないということを伝えたいのと、そのために必要だと思われることを書いてみたいのでこの記事を書きます。

 

1)(力量がありさえすれば)「豊かな生活」は可能

このブログ主さんが前日に書いたという「家庭教師で食っていくのは無理」という記事が削除されているようですので、その理由はわかりません(読んでみたかったなあ)。

たしかに、マンツーマン講師は「労働集約型」です。

稼働時間が16時くらいから24時くらいまでと考えると、一日2~4コマ。

時給次第で大幅に年収は変わりますし、Max入れたとしてもたしかに「2千万プレイヤー」は難しいでしょう。

でも、講師業専業で生きていこうと思う人の多くは(自分もそうですが)「組織」が苦手なんじゃないでしょうか。私は20年ほど組織に属し、そこでトッププレイヤーにもなりましたが、やはりああいうのは二度とごめんですね(^^;

何が嫌かと言うと

「自分のノルマを人から決められる」

ことですね。

どれだけ稼いでも、会社からは「前年比」でさらなるノルマを課せられる。

目覚ましい成績を上げたら上げたで、同僚からの嫉妬を回避するために神経をすり減らす。自分のエネルギーの半分くらいが「対会社」に吸い取られていく。

今考えてもアホらしい。

講師専業に限らず、「指名」が来るほどのしっかりしたスキルがあれば、ストレスフリーなことや時間の自由度を合わせて考えると、人生の満足度はフリーランス最強だと思っています。

 

2)個人契約よりセンター任せのほうが良いケースも多い

このブログ主さんが思い違いをされている点が一つ。

それは、ト○イなどに代表される家庭教師派遣業の多くのマージンが20パーセントなんてことはあり得ないということです(笑)。

以前も書きましたが、良心的なセンターさんでも4割ですね。テレビCMなどを打っている会社は5割以上が当たり前です。だからこそ、センター経由で家庭教師を頼む場合は「自分の払った額の半分しか講師に渡っていないと考えよ」と書きました。

 

mikoto2020.hatenablog.com

ですから、中には紹介だけセンターにしてもらったら即個人契約を持ちかける親御さんも結構いましたし、講師側から持ち掛けるケースもあると聞いています。でも私は、自分の場合はたとえ5割しか配分がなくとも、センター経由の方がいいと考えています。

それは

・営業活動

・マネージメント

というものの価値を、私は高く考えているからです。

「生産者」自身が営業活動するのって、「タダ」ではないです。

時間と労力がかかります。

そして、私は時間こそ金を出しても買いたいプライスレスな資源だと思います。

我々の仕事は夕方以降からが稼働時間ですから、それ以外の時間を営業に充てるのは一見「タダ」に思えます。ですが、自分はその時間はスキルの向上や自分の勉強、そして休養に充てたい。それをセンターさんがやってくれるんだったら、ギャラの半分お渡しするのは全然気になりません。

さらに、たまたま個人講師のブログなどを見て申し込む親御さんとは違い、センター経由で来たにもかかわらず個人契約に切り替えてをケチろうとする親御さんの考えには辟易しますし、そういう方は間違いなく後々トラブルになります。

ですから、講師業を始めたばかりでご家庭からそういう甘言を受けた方がもしこのブログをご覧になっていたら「やめとけ」と強く言いたい。

 

3)そもそも家庭教師は「紹介」されにくい

上でご紹介したブログ主さんは、「紹介で食っていける家庭教師こそがプロ」ということを言われていましたが、そこもちょっと疑問というかケースバイケースだと思いました。それは「顔出し」を是とするかどうかが大きいと思います。ここでいう顔出しというのは、ネット上のことばかりではなく「地元」でのものも含みます。

私も以前郊外に家を借りて私塾をしていた時期がありまして、その頃は「紹介」で成り立っていました。それは、「紹介したがり」のありがたい親御さんがいらしたからです。珍しいです。家庭教師に限らず、「それによって自分が他人に差をつけられるもの」は他人に教えないのが人間の常です。家電などは、他人に紹介したからと言って自分が損をするわけではありませんから良いものはどんどん人に知らせたくなりますが、勉強やスポーツ、美容など「他人と競うもの」の秘訣は「自分がまだ勝負している最中」に他人に教えるわけがありませんね。

地元密着で顔出しするという手はあります。

この場合、うまく回ると「卒業生」が次々紹介してくれることもあるようですが、その分「地元」への顔つなぎ=営業活動が不可欠のようで、自分には無理だなあ、と。

紹介案件と言うのは、相手が地雷案件でも断りにくかったり、常に全方位にいい顔しないといけないので結構労力削られる気がする。

 

4)講師専業で生活するには

これだけで一つのエントリになりそうなくらい色々ありますのでいずれ別記事にしようと思いますが、必要なことは以下の5つだと思います。

・最初は「カツカツ」なことが多いが、そこで自分を安売りしない

私もリーマンやめて1~2年は年収が5分の1くらいになりました(笑)。でもそこで、講師業はこれくらいしか稼げないんだ、とあきらめの発想にならないほうが良いかと思います。安さを売りにするセンターと付き合ってしまうと、薄利多売の発想になってしまい自分の能力を高めようという前向きな発想になりにくい気がします。

ちなみに、今はリーマン時代より年収は高いですし、時間の制約や人間関係やサビ残がないことを考えると体感的には「年収3倍になった」感覚ですね。本当に、生活が「豊か」になったと感じます。

・常にスキルを磨き、堂々とギャラ交渉する

「職人」のギャラは、自分から言い出さない限り上がりません。上げてくれるのを待っていてはダメです。堂々とギャラ交渉ができるように、きちんと自己投資をしてスキルを磨くのが王道。そこそこの学歴のある人なら、勉強しなくても教え続けることもできるでしょうが、それでは学生バイト講師のような扱いから抜けることは難しいです。

・良心的なセンターを見つけ、そこでトッププロになる

センターから真っ先に声がかかるようなトッププロになれば、仕事が途切れることはありません。というか、断るのに苦労するようになります。著名な作家さんが「直販」せず、芸能人があえて「独立」しないのは、こういうことだと思います(後述します)。

・スキルが上がっているのにギャラが上がらないときは転籍する

自己投資して、スキルも上がっている。ギャラ交渉もした。それでもギャラが上がらないときは、別のセンターに行きましょう(笑)。

家庭教師センターというのは、「そこに登録したとき」のランクをなかなか上げようとはしません。新しいパートナーなら「今の時価」を評価してくれる可能性が高いです。

・生活の「豊かさ」をトータルで考える

売れっ子講師になったとしても、前述したように「2千万プレイヤー」は一般的には難しいでしょう。でも、三田紀房さんの「インベスターZ」という漫画に「個人事業は『拡大』を考えてはダメ」という名言がありました。私もその通りだと思います。見かけの売り上げを増やすには、人を雇う必要が出てくる。固定費が上がる。何より、人間関係という一番避けたい高いコストが出現する。個人事業&フリーランスの最高なところは、時間の自由が利くこと・ノルマを自分で決められること・わずらわしい人間関係がないことでしょう。それは、お金にしたらそれこそ1千万以上の価値があると個人的には考えています。

5)営業やマネージメントを「中抜き」という考え方がそもそもおかしい

「額面」を上げたいとき、人は「直販」に目が行きます。

自分に価値があるから、販促や管理をする人が無駄だと考えるんでしょう。

でもそれは浅はかだと思います。

大好きな俳優さんや声優さんで、実力もとても高いのになぜか仕事がない方がいます。それは「独立」してしまったからです。「芸能村」が排他的だからという側面もあるでしょうが、やはり「自分を売り出す」のは相当大変ということだと思います。

作家さんの世界も同様で、出版社を通さず自分のサイトで作品を売ろうとした方々が軒並み表舞台から姿を消しています。

これはどういうことかと言うと。

芸術のような「個性」が重要視されるジャンルですら「唯一無二」な個性など、そうはないという残酷な事実です。もちろん、その人の強烈なファンは、本が書店に並ばなくとも、俳優がテレビに出なくとも追いかけることでしょう。でも「一般人」はやはり露出しないものは忘れていきます。

宣伝をしてくれる、マネージメントをしてくれる。

すごく大きな「仕事」です。

それらは対価を払って人に任せて、自分は自分の仕事に注力するのが楽。

私はそう考えています。