とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。理系。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

かわいい子には家事をさせよ

我が子がかわいいなら、毎日家事をさせるべき。

特に、料理。

これはずっと変わらない持論です。

理由はざっとわけると2つあって、

・一生幸せを感じながら生きるため

・実はものすごく勉強に役立つ

という2点です。

 

1)そもそも、生きること=食べること

 

再三再四、小学生の教え子の親御さんには「家事、特に料理をさせてください」と言っていますが実行するご家庭は皆無に等しいですね。

中受沼にどっぷりつかっているご家庭では「そんなヒマがあったら予習シリーズあるいはデイリーサピックスの復習!」なんでしょう。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか。

今、必死に受験勉強をしているのは何のためでしょう。

将来の幸せのため、ですよね。

まあここからは個人の感想ですが。

以前も書きましたが、金銭の豊かさで言うなら、東京の真の勝ち組は「地主」です(笑)。東大出てアクセンチュアに入ったところで所詮サラリーマン、本駒込5丁目や松濤、関西だったら阪急沿線かな?あの辺のお屋敷には絶対に住めません(笑)。

小学生という唯一無二の「時間」を週7日通塾とダブルスクールに費やして、運よくJTCや外資に入れたとしても、「激務→コンビニ飯」の毎日は、本末転倒に感じます。

これは酸っぱい葡萄で言っているわけではなく。

私自身がまさに20~30代、そういう毎日でした。

まあ、コンビニ飯ではなく外食・接待メシメインではありましたけど。

東京で働く=家賃と外食と見栄のための無駄遣いにサラリーを吸われてアセットは残らない=結局「東京」という生き物を肥え太らせる養分になったような気がしましたね(笑)。

 

人生折り返してつくづく思うのは。

人間は、食生活が荒れると幸せを感じにくくなる

んじゃないかな、ってことです。

 

激務とコンビニ飯or外食のコンボはだんだんウツっぽくなりますが、問題は「やばくなったあと」ではもう遅く、自炊して美味しいご飯を食べて気力を取り戻すための気力すらなくなっちゃう。若い人のつぶやきなどを見ていると、このコンボがすごく多い。

 

だから、毎日じゃなくても良いから「おいしいごはんの持つ力」を自分の体に与えてあげてほしい。

 

そして、「美味しい豊かな食事」って、料理さえできれば

そんなにあくせく金を稼がなくても実現できちゃいます。

 

料理スキルは、文字通り「一生モノの幸せスキル」です。

 

2)家事=科学

 

愛読書「Dr.STONE」にも書いてありましたが

料理=科学

 

料理はもちろん

家事のすべてが理科、そして数学です。

 

以前も書きましたが、「身体で覚えたこと」は忘れません。

どうせ、と言ってはなんですが、ガチガチに「テキスト」と向い合せたところで、(ごく一部の「勉強が三度のメシより好き」勢でない限り)子供はテキストの中身なんてさほど吸収していません。

ぼーっとしながらテキストと向き合って「勉強したというアリバイ」を作っているくらいなら家事をやったほうがよほどためになるし、家事も嫌いならゲームやってたほうがいいです(銘柄にはよりますが、ゲームはかなり頭良くなると信じています・笑)。

 

以下、家事の何が理科や算数に役立つのか書いていきます。

 

・洗濯物を干せば「湿度」や「つり合い」がわかるようになる

どのご家庭にもあるであろうピンチハンガー。

あれに靴下やタオルを干すタスクを子供にやらせると、徐々に「うまく釣り合わせる」ようになります。実際、「ピンチハンガーに洗濯物を吊るす」という問題は中受でも頻出です。また、びっちり詰めて干すと乾きにくい、という「体験」から湿度への気づきにもなるでしょう。

偏差値60あっても家の東西南北がわからない生徒も多いですが、日陰と日向を「体験」していれば間違えるわけないですね。

 

・掃除や洗い物は「酸・アルカリ」や「乳化作用」の体験

これは大人の解説がないとわからないでしょうけれども、油汚れは水では落ちず、石鹸や弱アルカリ洗剤だと途端に落ちる、こういう経験も貴重です。

「片づけ」は「分類」の学習にもなります。

 

・野菜を切る=立体切断の学習

立体切断、本当に多くの小学生が苦手です。

そもそも「切り口」が何かわかっていない。

刃物を使うことが激減していますから仕方がありませんが。

大根、じゃがいも、豆腐、この辺りの子供にも扱える野菜を切らせれば、少なくとも「切り口は平面になる」ことはわかるはずです(テキストのみの勉強をしている多くの小学生の描く「切り口」は時空が歪んでいます・笑)。

 

・ホットケーキなど簡単なレシピを「人数を変えて」作ることは「比」

2人分のレシピを3人分にするにはどうしたらよいか。

これを考えさせれば、子供なりに考え、「比」にたどり着くことも多いです。

 

・中受理科のうち「植物」分野は料理や園芸をしていたら間違えるわけがない

じゃがいも、さつまいもの芽の出方、テキスト暗記なんかしなくても日々台所に立っていれば覚えてしまいます。

人参や大根が「根」であることすら知らない中受生も多いですが、出された料理をただ食べるのではなく、皮をむくところから体験していれば教えられなくてもわかるはずでしょう。

 

・水を凍らせたら体積が増える

これを知らない小学生が多すぎて頭が痛くなります。

まあ、昭和と違って今や氷は自動製氷ですからね、仕方がないか。

何度も書いてますけど

人は便利になった分だけ自分のスキルを失っていく

んですよね…。

昭和の頃は、氷は製氷器に水を張って冷凍庫に入れていましたから、理科の知識がなくとも「水は上から凍る」「凍らせるとふくらむ」ことはみんな知っていました。

便利になるのも痛しかゆしですね。

 

・炎の形、温度など

数年前に、いわゆる炎心などを教えようとして「炎を見るとわかるでしょ?」と言ったところ「家で炎を見たことはありません」と言われてズッコけたことがあります。当然、ろうそくも知りません。

そうね、たしかに令和の家にはマッチもなければコンロもないかもね…。

家の中で体験できない、体験させてもらえない子たちが理科のテキストを丸暗記している図がゾッとするのは私だけでしょうか。

 

・熱容量

木べらで煮物を混ぜても手が熱くならないのに、金属製のレードルをうっかり鍋に入れたまま火をつけてしまうと熱くて持てない。あるいは解凍するときアルミに乗せると速く溶ける。このあたりは「熱容量」「比熱」の勉強に直結しますね。

・沸点

もちろん熱湯や揚げ湯に触らせるわけにはいきませんが(汗)、体感として「熱湯より揚げ湯のほうがよほど熱い」ことは子供にもわかると思います。なぜ水は100度以上にならないのか、なぜ揚げ物はカラッとして美味しいのか、こういうのも科学ですよね。

 

・溶解度

これまた驚いたのが、溶解度を教えていて「ほら、紅茶に角砂糖を入れるとなかなかとけないじゃない?」てな話をしたところ「飲み物に砂糖を入れて(自分で)かきまぜたことはありません」「飲み物は親が持ってきます」と言われることも多いです(苦笑)。ほんと、平成後期~令和の小学生って「テキストオンリーの受験勉強」しかしてないのか!?

 

・倍数感覚

配膳を子供にやらせてみたら?

ご家族の人数にもよりますが、2で割れるか3で割れるか4で割れるかはあっという間に身につくはず。お肉の枚数やドーナツの個数は子供にとっては何より大事ですからね!(笑)

「偶数か奇数か」を尋ねると、「筆算で2で割る」子、すごく多いですよ。怖くないですか。

 

・段取り力

家事は段取りが悪いと大変になります。

子供に任せてみると、最初はたどたどしいですが、だんだん「速くうまくやるにはどうしたら良いか」考え始めます。

これこそ「段取り力」、受験のみならず仕事でも一生役立つスキル。

 

・タンパク質の熱凝固

たまごを加熱したら、二度とあのドロッとしたたまごには戻らない。

 

・砂糖はこげる

こげた煮物に水を入れて「溶かそう」としても無理。

別の物質に変わっているから。

カラメルソースを作らせるのもいいですね。

 

数えだしたらキリがない、これでもほんのごく一部です。

まだまだあるので、また別の機会に書こうかな。

 

3)「ウチの子、そういうの教えても覚えないです」

 

事あるごとに、理科が苦手な子の親御さんにこうしたことをお話ししますが。

ま、実行なさるご家庭はほとんどありませんね、残念ながら。

面談のときは「すごいアイデアですね!やらせます!」と仰っていますが、実行なさらないのはおそらく心の中では「ミコト先生ったら(苦笑)。そんなヒマがあったら計算問題ひとつでも多く解かせたほうがいいに決まってるじゃない」なのかもしれませんね。

 

そういう方が時々「ウチの子、そういうの教えても覚えないんです~(だから塾の勉強優先です)」と仰います。

うん、体験からすらも学べないなら、テキスト勉強ではさらに学べないので中受に向いてないってことだと思いますよ。

おそらくね、早期詰め込み教育のしすぎで「無感動」「好奇心ゼロ」になってるんだと思いますよ。

本来、子供はこういうことが大好きなんです。

机の上の勉強に全振りして子供の体力リソースを使い果たしていると、子供は「よけいなこと」に興味持てません。

 

話は逸れますが、くらもちふさこ大先生の作品に「いつもポケットにショパン」という名作があります。主人公の母親は有名なピアニストで、たまに子供のための公開レッスンをするんですが、そこで同様に「リズムは生活の中で鍛えられます。ぜひお子さんに料理をさせてください」と言ったところ、参加者の親がいっせいに吹き出し「手を怪我したらいけませんから家事など一切させません」と言われるんですよね。そこで主人公の母親はひとこと「麻子(自分の娘)はシチューが得意です」と答えます。

まあ、そういうことですよ。

 

4)そもそも親が「家事」を見下げていないか?

家事ってたしかにキリがないし面倒なときもありますが、

やはり科学と数学の宝庫で、だからこそ「段取り」がうまくいってしかも成果がでると気持ちいいですよね。

勉強の成果が出るには時間がかかりますが、料理をはじめとした家事は「やった結果がすぐ目に見える」という意味で、ゲームに似た達成感があります。

子供もね、本来は「家族のためになった」ことが実感できるととてつもなく嬉しいんです。まさしくなんとかサイクルだと私は思うんですがねえ。親がね、テストの「点数」でしか喜ばないと子供がどうなっていくかは火を見るより明らかですな。

 

子供に家事を一切させないご家庭の中には、親御さんが家事を「くだらないこと」と考えているケースもありますね。「私がやるような仕事じゃない」と考えている。だから、大事な我が子にはさせたくない。

でも、人が生きていくときに、一生家事とは縁が切れません。まさに生きる力。

 

「3度のメシより問題解くのが好き」ならともかく、勉強嫌いな子から生きる力を奪って、さらにそのせいで「体験から学べたはずの理科・算数」の力を奪い、そしてその欠損を塾漬けにしてなんとかしようとするのは本末転倒ではないかな。

 

さらに、ご両親自身が家事を見下げて「外で稼ぐ」ことが好きな場合、子供は塾漬けの上にコンビニご飯、というご家庭もありました。これなど本当に本末転倒の極みだと思います。

 

5)かわいい子に家事をさせるときに一番大事なことは

 

(危険が伴う場合は別ですが)

一番大事なことは、教えないこと。

 

洗濯物がジメッとしていようが

ホットケーキが「チヂミ」のようになってしまおうが

お米に芯が残ろうが

死にはしません(笑)。

 

今の子に足りないのは「失敗体験」。

受験勉強も、「考えて試す」前に「効率よい解き方」を教えてしまうので、試行錯誤するチカラが圧倒的に育たない。

 

ジメッとした靴下をはくのは嫌だ!というところから、次回はもっと工夫するようになるでしょうし、あるいは今すぐ必要ならドライヤーで乾かすなどのアイデアを思いつくかもしれません。

偏差値にかかわらず、本来、子供ってこういうことできるんです。

親が先回りして「正解」を教えすぎ、間違えたときに叱りすぎるので、やらなくなるだけなんです。

「待つ余裕」があれば、子供は本来の力でもっと自分で伸びるはずです。