とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

「『かわいそう』と言うな」と言うな

ドラマ「二月の勝者」が終わり、ちょっとホッとしています。 このドラマは原作と同じく「『中学受験は素晴らしい』一色」だったからです。 たかがドラマに…と思われると思います。 たとえば野球漫画や野球ドラマで「球界の闇」は描かないでしょう。 エンター…

「発達障害は偏差値で埋めればいい!」は危険

おかげさまで、11月に新年度予約が次々と入り早くも2022年は満了になりました。 来年は無茶振りな中受案件がなく、望み通り中高校生指導に戻ったのでホッとしているところです。 今日は、以前からずっと引っ掛かっていたことを書きます。 近年、とみに増え…

「『二月の勝者』はゴールがたくさんあるからいい」という誤解~結局ゴールはひとつ

以前、こんな記事を見ました。 「東大一辺倒の『ドラゴン桜』に比べて、『二月の勝者』は子供の数だけゴールがあるからいい」というものでした。 私は、残念ながらそれは違うと思います。 「二月の勝者」は結局、御三家、いえ開成&桜蔭をベストゴールとする…

東京は子育てに向いていないんじゃないだろうか

過熱する一方の中学受験の指導をしていて、日々思うことがある。 それは、東京という特殊な街は、子育てには向いていないんじゃないかということだ。 理由はいろいろあるんだけど、一言で言うと 「〇〇をしていい場所」が非常に細かく決められているというこ…

動画中毒の子供たち~「ウチは大丈夫!」は危険

ここ数年「子供が動画中毒で困る」という相談が急増しています。 (「ウチは大丈夫!」は残念ながら通用しません。これは最後に書きます) さて、急増している相談とは。 たとえば もう6年なのに、隙あらばタブレットでYouTubeを見ている、取り上げると暴れ…

猫に受験させますか?

いささか挑発的なタイトルになっておりますが、誤解なきよう。 もちろん「お子さん=猫レベル」と言う話ではございません(笑)。 犬や猫、小鳥、ハムスター、はたまたハリネズミなどなど。 同居動物(造語です。ペットや愛玩動物と言う言葉が好きではないの…

「親」は「親」をかばうんだなという感想~「翼の翼」

昨日の続きです。 「翼の翼」、親が狂気に取り込まれていく過程や、親同士のマウントの取り合い、私立に行かない子を過剰に見下げる描写など、非常にリアルだっただけに、ラストに納得いかない思いがくすぶっています。 読後、思い出されたのが「次男を投げ…

「翼の翼」~子供を潰しておいてカタルシスに浸る大人たち~

読みました、話題の「翼の翼」。 非常にリアルでしたね。 でも、私はこれに「感動」したくはない。 翼の翼 作者:朝比奈 あすか 光文社 Amazon ネタバレしない程度にご紹介しますと、「わが子が頭がいいと思い込んだ親が子供を潰しかける話」ですね。 いや、…

来期から中受指導を辞めようと思う(3)

辞めようと思う、というか、もう辞めることを決めたんですが(笑)、一応過去記事っぽいのがあるのでタイトルをそろえてみました。 年々、「勉強に向いてない子」が中受させられるケースが増えているように感じます。 よく、やる気がどうのこうの言うじゃな…

「ドラゴン桜」と「二月の勝者」の違い

この両者は、題材がともに受験ということもあって、よく比較されているように思う。 最近、この2作品には根本的な違いがあると感じた。 それは「子供本人の物語かどうか」という点である。 「ドラゴン桜」は、終始、桜木先生が「人生を変えろ」「お前の人生…

「二月の勝者」のウソ(4)~「有名中に行くのはサッカーでプロになるより簡単」という欺瞞

始まりましたねえ、ドラマ。 念のため書いておきますが、あの作品を貶したいわけではございません。 楽しく、時に涙しながら読んでおります。 ただ、やはりいろいろウソがございまして、まあ漫画ですからそこに目くじら立てる気はないのですが「あれを本気に…

「サピは復習主義」?騙されています(^^;

サピックスは復習主義。だからテキストを事前配布しない。 うん、それは、サピがTAPから上位層を全部引き抜き、「御三家用授業」だけをやってこれた時代なら通用しただけの話。 何度も書いてますが、「『初めて出会う概念』をその場で理解できる子」ってどれ…

来期から中受指導を辞めようと思う(2)

前回の続きです。 今すぐは難しいけど、辞めると決めたら物凄く気が楽になった。 昔やっていたように、中学生高校生の指導に戻りたいが、都心だと難しそうだなあ。 都心はもはや中受一色と言っても過言ではないので。 家買い換えたばかりだけど、郊外に引っ…

来期から中受指導を辞めようと思う

中受はスッパリと今期限りにしようかと考え始めました。 まあ、正確には、数年先まで予約が入っているので、それが終わったら、ですが。 理由は、ストレスが半端なくなってきたからです。 以前の記事にも書きましたが、年々「受験どうこう以前の生徒」は増え…

中学受験は〇〇が9割~「親ガチャ」の真実

流行りましたねえ、あの本(遠い目)。 個人的には苦手ですね。 知り合いの東大生はみな懐疑的ですね(かなりマイルドな表現に変えております)。 あのアホな本のせいで中受ゴリゴリになっているご家庭が増えている現実を憂いています。 中受時点では「遺伝…

「モラハラ子供」の奴隷になる親たち

DV気質の子供がいる、と言ったら驚かれるでしょうか? 私は、このブログでは再々「教育虐待」について書いています。 前回の記事では「親ガチャは事実」とまで書いています。 mikoto2020.hatenablog.com ですから、もしかしたら「いついかなるときも子供が正…

「親ガチャ」は事実なのに大人はなぜ憤るのか?

最近流行の「親ガチャ」と言う言葉ですが、この業界の人はみんな感じてたことなんじゃないかな。 でも、大人たち、とくに親御さんはこの流行り言葉が大嫌いみたいですね。 子供が「親ガチャ」という言葉を使う動機も場面も様々だろうに、脊髄反射でキレてい…

コロナ禍で買って良かったもの(1)生活編

コロナ禍で授業はすべてオンライン化し、ほぼヒキコモリの生活になりました。 その中で、買って良かったものを備忘録として書いておきたくなりました。生活編と勉強編に分けて書いてみようと思います。 まず、生活の大きな変化と、それぞれについて買って良…

子供の特性を受け入れられない親(1)~よくしゃべるのに国語ができない子

この仕事、好きでやってますし、自分には一番合っている仕事だと思っています。 ですから、その仕事だけで食っていけるどころかキャンセル待ちが多いくらいの状態を日々ありがたく思っています。 それでも、心が折れそうになるときがあります。 それは、生徒…

「前にも教えたよね?」は禁句ではない

以前、「看護師の指導法十か条」のようなものを目にして驚きました。 どれもこれもが「今はここまで新人に優しくしないと訴えられるのか」とゾッとしましたが、とりわけ「『何度教えたと思ってるの?』はNG」という教えに驚愕です。 時代に逆行するようです…

中学受験に必要な「厳しさ」とは~中学受験は修羅の道

前々回の記事の補足のような記事です。 ちなみに前々回は、子供の「甘え」について書きました。 mikoto2020.hatenablog.com はっきり申し上げて、中学受験は、精神的にまだ幼さの残る子には向いていません。 5~6年前まではそうでもなかったんですけどね(^…

ダブルスタンダードな親に聞きたい

これまでにも、親御さんの「ダブスタ」には書いてきました。 今日は「どこまで厳しくするかは目標とトレードオフです」という話を書きます。 ダブスタの親御さんは、講師に「両立しえないこと」を望まれます(苦笑 これが非常に困る。 例えていえば「一切食…

小学生女子の扱いの難しさ~「テヘペロ」

初めにお断りしておきますが、男女の学力差が云々という話ではありません(汗 長年、小学校低学年から社会人まで教えてきて、「小学生女子」に特有の扱いの難しさがあることを感じるようになりました。(小学生男子は男子で特有の問題点があるのですが、それ…

東大2姉妹の母親は何をしていたか~私の場合

20年以上前の話なのであまり参考にならないかもしれませんが、恥ずかしながら私の親がどういう接し方をしてくれたか、そして私がどんな子供時代を過ごしたか、ご参考までに書いてみます。 ちなみに、私は姉妹揃って東大です。 そして、母は高卒です。女性が…

講師は親のここを見ている(4)~タテマエは百害あって一利なし

中高生になると、本人が自分で、自分の言葉でコーチと話し合うことができます。 中学生だと多少は親御さんの出番もありますが、高校生ともなるとほぼゼロ。 対照的に、小学生すなわち中学受験では、本人はほとんど何もしゃべらず親が志望校はじめ、ほぼすべ…

自粛生活の、あえて「良かった探し」

1年半ほど前を境に、世界は変わってしまいました。 全世界の人が、それぞれに辛い状況だと思います。 私は早々にヒキコモリ生活に移行しましたが、それはフリーランスだからできたこと。だからといって「自分は(比較的)安全だから世の中はどうでもいい」…

講師は親のここを見ている(3)~面談&メールの長さ~

以前書いたこととかぶってる気もしますが、まあブログというのは「その人のブログを過去記事まで全部さかのぼって読む」というものでもないと思いますので、気にしないことにします(笑)。 考えたら、出版されている本ですら焼き直しが多いわけですからね(…

講師は親のここを見ている(2)~「書類」の出し方

授業がオンラインに切り替わると、テストや宿題などで書類をやり取りすることが多くなります。今回は、このデータの作り方に、親御さんの「思いやり」「仕事ができるかできないか」「子供への声掛けが適切か不適切か」までが透け透けで見えてしまいますよ、…

講師は親のここを見ている(1)~コロナでわかる人間性~

多くの親御さんは、無意識に家庭教師や個人コーチを「下」に見ていると思います。 「金を払っている」という意識がそうさせるのでしょう。 でも、そう思い込んでいると怖い落とし穴がありますよ、というお話です。 私は、コーチ業とお医者さんは似ているな、…

五輪に学ぶ(3)~「子供の実力を見極めること」の大事さ

今日の女子10000メートルは、見ていて胸が痛くなりました。 なぜなら、「まさに受験レース」を具現していたからです。 競技参加者が全員精一杯やってきた場合、「下剋上」はありえません。 トップが敗退するという番狂わせ、はありますが、それを期待して闘…