ドラマ「二月の勝者」が終わり、ちょっとホッとしています。
このドラマは原作と同じく「『中学受験は素晴らしい』一色」だったからです。
たかがドラマに…と思われると思います。
たとえば野球漫画や野球ドラマで「球界の闇」は描かないでしょう。
エンターテインメントとはそういうものだと理解はしています。
でも、子供が題材の場合は別です。
中学受験の実態は、断じてあんな爽やかスポーツ漫画みたいなものではない。
凄まじい親子バトルがあり、子供を教育虐待する親も多く、競争に負けた子供が小学校で「さらに下」をイビって憂さ晴らしすることも多々ある。
などとモヤモヤしていましたが、端的にズバリ書いてくださっているブログがあったのでご紹介させていただきます。
wagahaiblog.hatenablog.com
そうなんです。
「主人公が闘う」漫画やアニメやドラマなら構わない。
「大人が子供を闘わせる」構図に、モヤモヤするわけです。
たしかに、トップ層にとっては受験はスポーツとまったく一緒です。
「得意技」が勉強だっただけです。
それで競って何が悪い。何も悪くありません。胸を張って競争したらいい。
あるいは、トップ層ではなくとも「勉強・学問が好き」なら構わない。
好きなことには、結果は二の次でのめりこんだらいい。
問題は、勉強が好きでもなく得意でもない層。
この層が、たまたま東京に住んでいて周りはみんな塾に行っているからと「うっかり」塾に行きだすと悲劇。
「二月の勝者」では「中受をするのは上位20パーセント」と言っていましたが、あれは大嘘つきのコンコンチキってやつです。
「夕暮れ」が読めない、「従順」の意味がわからない。
「はじき」を使わないと速さが出せない。
「地動説」が何かわからない。
そのレベルでも、中受はします。そして、ぶっちゃけた話、Y偏差値40前後の学校ならそれでも受かります。
私立に受かる子は小学校のカラーテストは満点、なんていうのも大嘘です。
この層は、基本的に勉強が大嫌いです。
こういう子に進学塾が何を教えているかと言うと。
「理解」させることは放棄し公式を丸暗記させ、テクニックのみで問題を解かせます。
それで得るものは何なんだろう。
以前も書きましたが、1年以上通塾して下位クラスだった場合、残念ながら「中学受験」はその子の「得意技」ではなかったということです。
それでも本人が勉強を好きならともかく、嫌いなら「いったん」引くのが吉です。
何度も書きますが、中学受験は「異常」と言っていいほど過熱しています。
長くなるので次回以降に書くつもりですが、最近の入試問題はひどい。
高校入試・大学入試レベルの問題が平気で出題されている。
オリオン座も月食も見たこともない子たちに惑星の逆行やコリオリの力を「机上で」解かせることに何の意味があるんだろう。それも、こう言ったらなんですが御三家ならともかく、いまや中堅レベルがそういう出題をしています。
それらを運よく解けた子も、「理解」はまったくしていないと思いますよ。
最近流行りっぽいのがPhですね。
小学生に対数グラフを出すのはやりすぎではないですか。
そういう「異常」な中学受験をせずとも、心身ともに成長すれば十分都立高受験には太刀打ちできます。
話を戻します。
「二月の勝者」の中にも「『小学生にあんなに勉強をさせてかわいそう』と言うな」というくだりがありましたが、それは上述したように
・本人が勉強を好き
・トップ層
の場合にのみ言えることです。
勉強が嫌いなうえに超苦手な小学生に、「いまはまだ必要でないレベル」の勉強をゴリゴリさせ、勉強漬けにすることに対しては私は「かわいそう」と言います。
本人が勉強を嫌で嫌で仕方ない、だから塾でも下位、なのに親はなんとかしようと私どものような個別コーチを付けたり、塾で補習をさせたり、ひたすら勉強漬けにさせます。分数の割り算ができない子、流水算でそもそも「静水時」の意味が分からない子、そういう子に塾で5時間勉強したあとに個別を2時間つける。休日がない。私は、それは「かわいそう」だとはっきり申し上げたい。
私は、この世で一番かけがえのないものは「時間」だと考えています。
子猫や子犬に「早く大きくなれ!」と、小さな口に食べ物を押し込むのが「おかしなこと」だとはわかるはずなのに、なぜ子供にはそれをしてしまうのか。
「子供のうち」しかできないことはたくさんあります。
これを読んでいるみなさんも、「子供のときに読んだから・見たからこそ感動した本や映画」は多数あるのではないですか?
子供だったからこそできた、友人との遊び、そして諍い。
ダンゴムシを集めること、空を見上げること、エトセトラ。
勉強が嫌いで苦手な子にゴリゴリと勉強を押し付けている親は、その時間を奪っているんだと感じます。
中学受験のあの狂気を過ぎた親が憑き物が落ちたように諦めているのも、子供からしたら裏切りに感じると思います。
中学受験レベルまでなら親がわかるからゴリゴリやってきて、受験を経て「やっと」自分の子供の実力を悟り、そして諦める。
たしかに、中受に「失敗(この言い方大嫌いですが)」してリベンジとばかりに高校受験や大学受験まで口うるさく言い続ける親もそれはそれでどうかと思いますが、我が子の可能性を信じ、自分がエネルギーを注ぐことをいとわない点「だけ」は親として素晴らしいともいえるでしょう。
個人的には、中受の結果が出るまでは「現実から逃避し」「10~12歳の子供を」ゴリゴリ勉強に縛り付け、結果が出て初めて我が子の実力を悟り、あとは放置の親が一番まずいと思いますね。
中受の結果を待たずとも、1年通塾させて様子を見れば、本当は我が子のレベルはわかっているはず。でも、諦めきれないんですよね。なんでわからないんですかね、1年通塾した時点で。ていうか、ほんとはわかってますよね、我が子の実力。でも諦めきれないから、未練で6年の2月までゴリゴリやるんですよね。
「親が諦める」ために、二度と戻ってこない小学生時代、子供に「つきあわせる」のはなんか違うんじゃないですか。
そこまで子供を追い詰めるなら、最後まで付き合うべきです。
1年以上通塾して
・逆算ができない
・語彙力が圧倒的に足りない
場合は、「いったん」中受からは引いた方が良いと思います。
中受で勉強ゴリ押しすると
・勉強が嫌いになる
・思考力が育たなくなる
というデメリットがありますから。
まあ、こういうことを考えていると、本当に東京は子育てに向いていないなあと感じますね。「東京都心」にいる限り、中受は無視できない。仮に親御さんが「我が子は小学生のうちは子供らしくドロケーとか木登りとかして友達と遊んでほしい」と思っていても、周りがみんなやってるわけですから。
巻き込まれていきますよね。
でも、はっきり言っていいですか。
中受で、何年間も通塾させて、さらに個別もつけてそれでもY偏差値40前後の場合、「小学校の間は普通に遊んでいたけど中学で本気出した勢」に抜かれていきますよ。
「中学受験はそれだけではない!『環境買い』だ!」という声があるのも知っています。でも、都内の公立中って別に荒れていないことの方が多いと思いますけど。
以前の記事でも書きましたが、「東京で育つこと」ってメリットよりもデメリットのほうが大きい気がしています。
多くの親御さんが中受に過熱するのって「二月の勝者」の武田くん親のように、学歴さえ手に入れれば強いという誤解に起因すると思うんですよね。でも、東京都心に住んで気が付くのは、ぶっちゃけ「東大行っても、富裕層の暮らしが手に入るわけではない」ということです。せいぜい、5~8千万のマンション。だって、「雇われ」ですから。
サラリーマンである以上、大差ないっす。
先日話題になった「大東亜以下」云々の話のように、たしかに学歴フィルタはありますが、逆に言うとサラリーマンである以上、ほんと大差ないです。
「東京」って本当に魔物だなあ。
私は一周回って、むしろこういう暮らしに憧れていますが。
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