とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

「モラハラ子供」の奴隷になる親たち

DV気質の子供がいる、と言ったら驚かれるでしょうか?

 

私は、このブログでは再々「教育虐待」について書いています。

前回の記事では「親ガチャは事実」とまで書いています。

 

mikoto2020.hatenablog.com

 

ですから、もしかしたら「いついかなるときも子供が正しい、と考えている」と思われているかもしれませんね。

でも、実は違います。

たしかに、教育虐待と言わざるを得ないケースを毎年多々経験していますし、そのたびに言いようのない憤りを感じています。

でも、一方で「子供が『受験を盾にして』親を支配している」ケースもあるのです。

 

今回は、それについて書きます。

 

DVの加害者って、「常に」攻撃的ではないのです。

無意識にアメとムチを使い分けて相手を支配する。

だからこそ、DV被害者は逃げ出せないのです。

 

以前も書きましたが、猿の実験です。

・ボタンを押すと常に餌が出る

・ボタンを押しても餌が出る確率は半々

こうすると、圧倒的に後者の方、つまり「ボタンを押しても餌が出るかどうかわからない」ほうが、猿はボタンを押し続けるそうです。

非常に残酷な実験で、聞くのも書くのも嫌ですが。

 

DVで言うと、「地雷」が一定していないので、周りは過剰に気を遣ってしまう。

アメをくれるときもあるので、そこに期待してしまう。

 

無意識にこの術を身に着けてしまっている子供が、存在するのです。

それも、少なくない割合で。

 

子供は、大人が思うよりはるかに多くのことを「学んで」います。

「勉強する気を見せる」と親が機嫌がいい、と学べば、それを利用する子もいます。

「〇〇(難関校)に行きたい」と言えば親が喜ぶと知っている子は、そこに向けて努力する気はないのに、そう言って親に期待を持たせます。

その結果、どうなるか。

親が、完全に「子供の気分」に支配されることになります。

勉強を「してもらおう」という考えになってしまいます。

 

恋愛DVとそっくりで、ちょっとゾッとしますね。

恋愛DVで、なぜ被害者が逃げ出せないのか。

度重なる暴力で、洗脳されてしまっている部分もあるでしょう。

でも、「いつかこの人が暴力なく優しく自分を愛してくれる」という「期待」が、逃げ出すことを阻害しているケースも少なくないと聞いています。

 

「親を支配する子供」は、無意識にこれをやっています。

親御さんが「私が子供の地雷を踏まなければ、この子は勉強して〇〇に入ってくれる」という「期待」を持ち、そのためならと子供のわがままを許してしまう、それを知っています。

馬鹿を言っちゃいけません。

自分が〇〇に行くのは自分のため、それ以上でもそれ以下でもない。

それを駆け引きに使うのは、卑怯の一言に尽きます。

 

具体例としては、こういうタイプの子は

勉強したくないときに

・癇癪を起してみせる

・ぶすっと不機嫌になってみせる

つまり、感情を道具にします。

そうすれば、親があたふたしてご機嫌を取るのがわかっているからです。

 

「自分が勉強しないのは、パパ/ママが僕/私の機嫌を損ねたからだ」という形に持っていく。つまり責任転嫁。親が自分を苛むように仕向けているのです。

 

「わが子が〇〇に行ってくれるなら」

「勉強して『もらう』」

という考えは、はっきり言って間違っています。

我が子に『〇〇合格』を盾にして「支配されて」いないかどうか、冷静に考えてみてもよいのではないでしょうか?

 

シビアな真実を申し上げれば、モラハラ気質の子供が受験を盾に親をいいように振り回している間にも、「自分のために勉強する子」たちは黙々と学問と格闘しています。もしお子さんが親を振り回そうとしているならば、勉強以前の問題で、親子関係の再構築や躾からやり直さないとダメだと思います。

 

これが、競馬馬なら、「なんとかご機嫌を取ってトロフィー取ってもらおう」となるのも「ありといえばあり」でしょう。それは、「トロフィー自体に価値がある」からです。でも、「〇〇合格」はトロフィーでもなんでもありません。それは通過点でしかなく、勉学は一生続くものです。

 

ちなみに、子供に振り回されないための対処法でベストなのは

「勝手にすれば?あなたがどこに行こうとママ/パパには関係ないから」

という態度です。

自分語りになりますが、ウチの親はこれでした。

「東大行きたいなら勝手にしなさい」でした。

東大目指しているからと言って甘やかされた記憶が一切ないどころか、日常生活や人間関係をおろそかにするとぶん殴られていたのは以前書きました(笑)。受験真っ最中ですら「勉強だけできてもしかたがない」と言われたときにはムッとしましたが(笑。

おかげで最後まで「自分のため」に勉強できましたので親には今でも感謝しています。

 

〇〇合格というトロフィー欲しさに「子供の奴隷」になっていないかどうか、今一度考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

ちょっとゾッとするお話を最後に。

小6で受験を「人質」にして親を支配する子は、中高ではさらにその傾向が強まります。家が荒れ果てます。私は、そういうご家庭をたくさん見てきました。