とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

私が書いたのか!?と思う本を見つけた(笑

すごい本を見つけました。kindleよ、勧めてくれてありがとう。

 

私の持論とピッタリ一致しすぎて、もしや寝てる間に自動書記したかと思ったぞ(笑)。という冗談はさておき、さらに客観的なところが素晴らしい。

過熱しすぎた中受に真っ向から切り込んでいるがゆえに「私立万歳」な方からは苦言も呈されているようだが、それは著者があえてやっていること。つまり、今やギョーカイは中受礼賛しかしないので、偏りすぎたバランスに一石を投じるために極論を言っているだけ。いやあ、素晴らしかったです。ぜひ、多くの方に読んでいただきたい…!!!!

 

東京はもはや「中受しないのなら人にあらず」の様相。

 

もし私に子供がいてその子が私ほど勉強が好きでない子だったなら、私は東京脱出していたと思う。そして違う道を自分で探せるようにしただろう。

 

これほど中受が過熱した状況下では「私の望む小学生時代&中学生時代」を送らせてあげられないだろうから。「おばさん、時代は変わったんだよ」という声が聞こえてきそうですが、私はやはり身体も出来上がっていない子供が21時まで塾にいて、小4からは外で遊ぼうと思っても遊ぶ友達がいないというのは生物の本能として受け入れがたい。21時なんて子供は寝る時間だろ笑。

 

著者の瀬川さんもはっきり書いておいでですが、そして偏差値にこだわるのは私の最も嫌うところではありますが、「偏差値40でも私立中に行くほうが公立中より頭がいい」なんていうのは真っ赤なウソです。「偏差値40未満の真実」と題して記事を書こうと思いながらいまだ書けていませんが。経験上、偏差値40前後の私立中の「ボリュームゾーンの子」は、決して小学校のカラーテストで満点なんか取れていません。むしろ、ヤバさを感じるレベルです。漢字テストのヘンとツクリが逆になったり、カラーテストレベルの算数の文章題が読み取れなかったり。それでも偏差値40前後の学校には受かっていきます。そういう学校も、なぜか進学実績としては(国公立は無理でも)上位はMARCHに十人くらい受かったり、たまに早慶が1~2名出たりします。これに親御さんたちは騙されちゃうんですよね…(汗)。

 

偏差値40前後の「全入」に近い私立中から早慶やMARCHに入る子は

(過去の私の教え子のように)中高で開花した子もいますが、激レアだと肝に銘じていただきたい。ちなみにその教え子ちゃんは、なぜ開花できたかというと(私の指導も良かったとは自負していますが)中受時にはものすごく余力を残していたからなんです。親御さんが「少しでもヘンサチ高い学校へ」ではなく「自分の母校へ」だったので、ほぼ全入な中学に入りその後伸びたという次第。そしてこれは超レアケースです。

ほとんどの場合、

偏差値40前後で「進学実績」を稼いでいる子は

・併願がいわゆる「特攻」で全落ちでやむなく来た子

・特待が必要だから来た優秀児

ですね。

ま、だからこそ少なくない私立中が特待生制度を採ってるわけですよ。

「進学実績」に、その子が特待生だったかどうかなんて書いてないからね。

宣伝としてはこれ以上ない宣伝になる。

 

私立中に行かせた親御さんで、ことさらに「公立にいかせなくてよかった!」「公立はクソ!」と言ってる方多いですけど、いわゆる「サンクコスト」デカすぎで迷惑だからやめてほしいわ。

自分の選んだ道を否定したくない気持ちはわかる。

でも、「選んでない道=公立中」を腐すのはたいがいにしてほしい。

もちろん、私は公立>私立と言いたいわけではないです念のため。

でも、私立がパラダイスかと言ったら絶対そんなことはないと言っておきたい。

以前も書きましたが、内申制度。私立の「評定」も学校によってはかなり不透明です。進学実績を上げるために、テストの点の良い子にはあえて低評価をつけその分をテストで点が取れない子に「回して」指定校推薦を取る、という手は良く聞きます。実際、私の教え子もやられました。公立中なら喧嘩上等で乗り込むこともできますが、私立の場合「ウチが嫌なら出てってどうぞ」になるのでできないんですよね。

 

私立ならイジメや不登校やなんやかんやがない、なんていうのも真っ赤なウソ。

私は中受で終わりではなく継続を望まれることが多いので「その後」の話もよく聞きますが、聞いていると人間関係の面倒くささはどこ行っても一緒ですね。

不登校も結構な割合で起きているのですが、私立は「退学」しちゃう/させちゃうから(苦笑)。高校に上がるときに「肩たたき」があるのは周知の事実。

(これはいまだに悔恨している教え子ですが、親御さんのプレッシャーで無理くり御三家に押し込んだ子で、一年目から不登校になって退学になった子がいました。鶏口牛後を言う気はありません。牛後で入って頑張れる子もいるから。でも、子供自身が牛後で良いと思っていなかった場合、牛後を狙う受験は子供に取り返しのつかない傷をつけるんだなとわかりました。)

私立だからといってイジメは普通にあるし、不登校からの退学もあるのが私立中。

 

何度も言いますが、私は私立中が嫌いなわけではないです。学問が好きな子は、じゃんじゃん行ったらいい。野球上手い子が中学の部活では満足できずにリトルリーグ行ったり、サッカーうまい子が動揺にユースに行くのと一緒です。

でもね。

学問が好きな子が、なんで塾の宿題をやらないんですか?

「塾の宿題すら、親に叱られないとできない子」は、中受向いてないですよ。

私は、中受せずに小学生の頃はセミの抜け殻集めたりして遊んでた子が中高で「目覚めて」自発的に勉強始めて(人が憧れるような)志望校に受かるというパターンをたくさん見てきているだけに(そしてそういう子は今でも気軽に私の私塾に遊びに来ます)「勉強が嫌いになってしまうほど負荷を与える」のは間違っていると思っています。とにかく、今の中受の「負荷」はおかしい(自発的にやるトップ層除く)。

 

では、なんでここまで中受熱が高まる一方なのか。

それはね。

そうなると「得をする」人がいるからです。

中受ギョーカイはもちろん、ギョーカイにぶら下がってるマスコミ関連。

以前記事に書いたおおたとしまさ氏なんかもそのたぐいでしょうね。

今回ご紹介した瀬川松子氏の書籍にたびたび出てきた「プレジデント」なんかもその筆頭ですね。

 

「プレジデント」という名前で「セレブになりたい人たち」の心をくすぐってますが、ちょっと冷静に考えてみましょう。

 

以前も何度も書いていますが、「庶民出身」の場合、たとえ東大に行っても、一流企業に勤めて出世するだけでは「プレジデント」がお勧めする時計やスーツなどを買えるようにはなりません(苦笑)。なぜなら、日本は「よくできた社会主義=わりと平等な社会」だからです。だから「一代で」巨万の富を得るならば、三木谷さんや堀江さんや前園さんのようなエポックメイキングな偉業が必要です。そしてそれをするためには、学力プラスアルファが必要なんです。

 

「セレブ向けの雑誌に載っている車や時計が買える人」というのは、そういう一代で成り上がった人ももちろんそうでしょうが、この「わりと公平な日本」では、おおむね「代々財産を持っていた名家」絡みでしょう。ウチの近所にも名だたる高級住宅街がありますが、あの辺の御屋敷は東大行ったくらいじゃ絶対買えません(笑)。そういうことをね、言わずにね、「頑張ればあれらが手に入る」とばかりに煽るプレジデントもまた中受ギョーカイが下火になっては困る人たちなんでしょう。

東京で「スゲー」って感じの家に住んでる人は、ほぼもれなく「代々の土地持ち」です。資産と言う意味では、私のような、ただ単に東大行って仕事で成功しただけの庶民にはかないませんね。私は、むしろああいう方々には「ぜひ頑張って相続税払って『お屋敷』を維持してほしい」と願っています。だって「お屋敷街」って歩くだけで楽しくないですか?分割されたら悲しいです。

 

これは「プレジデント」だったかどうか忘れましたが、サピックスの社主のインタビューがあったんですよね。で、サピックスの社主は、自分の子供を開成にも筑駒にも入れる気はまったくなく、海外の超一流校を目指しているという話でした。皮肉にもほどがある(苦笑)。そういうことなんですよ。エポックメイキングなことをして巨万の富を得た人は「小さなコップ」の中の上下なんか気にしてない。「庶民」が「タワマンの何階か」でマウントを取り合っているのを尻目に、その「庶民」から稼いだ金で全然違う地平を見ている。ま、ビジネス的に言えばサピの社主はあんなインタビュー受けるべきではなかったと思いますがね。自分たちが推奨する「サピックスメソッド」を自分の子らにはやらせないというだけで、いろいろ見えてくるものがありますね。

 

話が逸れました。

「プレジデント」をはじめとした「セレブ向け雑誌」がね、そういう実態を知らないはずがないんです。

自分の雑誌が喧伝している「けた外れの富豪」は実は

・代々の土地持ち

・エポックメイキングなことを成し遂げた人

・スポーツ選手や漫画家など、ものすごく低確率で才能を昇華させた人

であるということを。

なのに、なぜ彼らは中受を煽るのでしょうか。

答え:売れるから。

 

何度も書いているように、そういう「〇〇に行けば××が手に入る」ではなく、今の成績にかかわらず勉強が好きで「学問というフィールド」で競い合いたいなら好きなだけやればいい。でも、いろんな中受ブログ見てもそんな子は一握りですよね。

 

公立中がそれだけで素晴らしいというつもりはないです。身分が保証されているということが人を甘やかしてしまう側面は嫌と言うほどわかっています。

でも、ここで強調しておきたいのは「公立中教師は反論できないサンドバッグにされている」という点です。

公立中や公立小の教諭は、たとえ生徒側に比があってもその子の親がTwitterあたりで「こんなことをされた!クソ!」というのに反論できません、ルール上。

だから承認欲求の強いモンペは、四六時中Twitterあたりで先生をやり玉に挙げる。

それを「しめしめ」と利用しているのが、中受ギョーカイな一面は確かにあります。

 

上述の瀬川松子さんの著書に詳しいですが、私立中の中でいろいろな問題が起きても「報告義務」がないんですよね。有名人の子息がイジメの首謀者でもいつの間にか「なかったこと」になっているのも珍しい話ではありません。

 

「なにがなんでも私立でなきゃ」となる前に

・なぜそう思い込んでしまったのか(煽られたのではないのか)

・本当に私立はパラダイスなのか

・公立を下げることで得する人たちは誰なのか

を、一度立ち止まって考えてみても良いのではないでしょうか。

 

ギョーカイやギョーカイにぶら下がったコバンザメに煽られて「大学に行けば〇〇が手に入る!」と思い込んだあげく、親子ともども「かけがえのない小学校時代」を失うことのありませんように、と願うばかりです。

付け加えますと「塾漬け」にしても「基本的な問題」すら解けない子に無理やり「(そこそこの)学歴」をつけるといろいろ問題が起きがちですし、社会の側から言わせていただくと結構迷惑です。

 

次回は「学歴と学力は違う」ということを書ければと考えています。