とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

志望校は過去問を見て「選ぼう」

志望校、どうやって決めていますか?

「文化祭etcで一目ぼれした」

という理由も多いかとは思いますが

一方で多くの受験生&ご父兄は偏差値で決めているのが実情だと思います。

 

でも、ちょっと待ってください。

「その学校がどういう生徒が欲しいか」が一番あからさまに露見するのは入試問題です。

大声で叫んでいるようなものです(笑)。

それを分析せずに、学校側がタテマエをしゃべる説明会や、晴れ舞台の文化祭や体育祭だけで選ぶなんて怖すぎますよ。

たとえて言えば、学校説明会やHPの理念なんちゃらは「お見合いの釣書」で、過去問こそが見合い相手の「素顔」です。

 

ついでに言うと、入試問題見ればその学校の教師の知的レベルも丸わかりです。

 

例えば、多くの大学付属中学の求める生徒像は、同じくらいの偏差値の中高のみの学校とはまるで違います。

「素直で、健全な家でのびのび育って伝統とか自然に知ってる子」

「難問は解けなくていいから基本問題を的確に解ける子」

「世の中に興味のある子」

これは、入試問題が良問&易問のオンパレードなことを見れば明らかです。

一方で、家で手伝いしてたり、ご家庭がお節句を祝ったりしてないと絶対に解けない「常識」を聞いてきます(特に慶應)。

 

「御三家」などとひとくくりにされてもカラーは真逆なほど違うのは周知のとおり。

桜蔭の算数は「忍耐」を要求するし、片や女子学院は「頭の回転の速さ」を要求する。

 

その学校の求めているものが如実に出るのが国語と算数。

国語は、もはやネタが尽きてきたのか(苦笑)小中学生向けではなく明らかに大人がターゲットの小説や論説文がゴロゴロしています。戦時中や昭和の話を出されても、我々大人が古文を読むようなものだと思うんですが、なんでああいうの出すのかな?出すなら出すで、完膚なきまでに註釈を入れてほしいものです。

今の小学生なんて、ワープロすら知りませんよ?

理科で言えば、栓抜きなんてないご家庭も多いでしょう。

そして、それは悪ではないわけです。

今の子供たちは代わりに別のものを知っているしうまく扱えるわけですから。

 

国語といえば、一時期浅田次郎先生の「霞町物語」がよく出題されていました。

私もあれは大好きな本ですが、今の子に「マグネシウムでたくストロボ」とかわかるわけがないでしょ。それがわからなければあの話の良さは万分の一も伝わらないというのに。。。

 

また、一部の難関校は「リード文」なしで、かつ変な場面から話をはじめ、人物の相関関係がわかるのは後半とかいうトンデモな小説のっけてますが、そもそも「映画や小説を途中から読む」なんてことはないわけで。リード文を載せなければ、簡単に問題を「難しく」できます。でも、読解力ってそういうところで測っていいわけ?

 

とまあ、挙げればきりがありませんが、要は、そういうところにその学校の「姿勢」が見えるわけです。昭和の話をしてピンとくる子が欲しい、とかね(笑)。もしわざとそういう出題をしているのではなければ、こういっちゃなんですがその学校で問題作ってる先生は「外では時代が変わっていることに気づいていない」んじゃないかな。

 

過去問を分析するのは「受かるため」じゃありません(それもあるけど)。

まず「その学校は生徒に何を要求しているか」を分析し

「それが自分に合うかどうか」を冷静に判断するためです。

その意味で、大手塾が9月まで過去問を解かせない、というのは私には疑問です。

さっさと目を通して、「自分に合うか合わないか」判断して、合わないところはさっさと切りましょう。

 

大学受験だって同じです。

偏差値が似たり寄ったりでも、「なんか解いててストレス」「解いてて楽しい、達成感がある」という違いは必ずあります。

 

結婚と一緒にしたら叱られそうですが、でも一緒です(笑)。

「解けないからつまらない」ではなく「解けるけどつまらない」学校なら、たぶん入ると後悔するんじゃないかな。だって、相手(学校)の求めているものと自分の資質がズレているということだから。

 

結婚で言えば、一緒にいるとストレスなのに金や地位に目がくらんで選んで後悔するのと一緒。

 

たぶん、少しでも高い偏差値の学校を目指す気持ちは「人からすごいと言われたい」というのもあると思うんだけど、他人は自分のことで精いっぱいなので、あなたがどんな偏差値の学校に行っても3秒後には忘れています(笑)。

 

受験生自身が春ごろ過去問読んで絶望するというなら、親御さんが読んでみてください。たとえ解けなくても、なんとなくその学校が求めている資質が見えてきますから。

それがわが子に合わないと思ったら、偏差値に騙されないでさっさと切りましょう。

 

中学入学時の「入口」の偏差値なんて「出口」を保証するものではまったくありませんし、人生全体で見たらまったくもって誤差の範囲です。