人気中受漫画「二月の勝者」の冒頭に、難関校に受かった小学生に向かって「自分の実力だと思いあがるな。君らが難関に受かったのは『母親の狂気』と『父親の経済力』だ」と言い切るシーンがある。
いや、まずいでしょそれ(苦笑)。
漫画を盛り上げるためだとはわかるけど、ウソもいいところだわ。
これ、「親にうまいことノセられて『親ターボ』と『個別・カテキョチート』までつけて中堅校に合格した」っていうようなボリューム層に向かっていうならまだわかるけどさ。超難関校に受かる子には『母親の狂気』なんか関係ないから。つーか、『母親の狂気』ごときで受かれるほど超難関校は簡単じゃないんで。
超難関に楽に合格する子の親ほど、ほとんど子に手はかけず放置もいいところです。
今日は過去の経験から「狂気の母親」について書いてみようと思います。「母親ばかり責めるな」と言われそうですが、実際中受ギャンブルにはまっておかしくなって子供を潰してるのは圧倒的に母親が多いんで、しょうがないですね。島津パパみたいのも確かにいますので、それはそのうち書きます。
- 1)「あんたがやりたいって言ったんでしょ?」
- 2)「〇〇に入ったら楽できるから」と子供をだます
- 3)子供の前で平気で低偏差値校を馬鹿にする
- 4)「撤退」の二文字がない
- 5)「DNAという武器」を持たずに戦場に駆り出される子供たち
- 6)偏差値がすべての尺度
- 7)子供は競馬馬じゃない
- 8)いろいろ言ったけど
1)「あんたがやりたいって言ったんでしょ?」
子供の「塾行きたい」「〇〇に行きたい」を逆手にとって追い詰める親御さん、多いですね。以前も書きましたが、子供の「塾行きたい」なんて友達につられてだったりしますし、「〇〇行きたい」も「ユーチューバーになりたい」と同程度の重みしかありませんよ。昨日までの夢はパン屋だったのに今日は漫画家、それが子供です。
でも、「狂気の母」は子供のこの言葉を待ち構えてるんですよね。時には誘導もする。「〇〇に行きたい」って言ったらお母さん喜ぶかな?と言ってみたら最後、数年間「行きたいって言ったのはあんたでしょ?」と追い詰められるなんて考えただけでハゲそうだわ。
この手の親御さんは、子供がやめたいと言い出すと「本当にいいの?」「お母さんは別にいいのよ、あなたの人生だから」と圧迫面接します(苦笑)。12歳がそこで本音を言えるわけないだろ。で、「やっぱり頑張る」と無理やり言わせて、その後はさらにそれを「あんたが続けるって言ったんだよ」と呪縛にします。「お母さんは許しません!」と主語を明確にして「悪者」になったほうがまだマシだわ。
2)「〇〇に入ったら楽できるから」と子供をだます
バカ言っちゃいけません。大学付属でも、成績良くないと希望の学部には行けず「〇〇大学という看板」しか手に入らないのは周知の事実。それならまだいい方で、中高一貫私立は「肩たたき」ありますよ?
運よく「肩たたき」に合わなくても、俗にいう深海魚くんたちがどれだけつらいか。
難関中合格はプラチナチケットでもなんでもない。「それで上がり」どころか、さらに厳しい戦いが待ってるんだから。
子供自身が勉強大好きで、さらなる(健全な)競争を望むことももちろんある。でも、そうじゃない場合、子供からしたら「だましたな?」ですよね、入っても一息すらつけないのって。
子供はいつか親のウソに気がつきますよ。
脅かすわけではないですが、「だまされたと気づいた子供」が「復讐」をしないとは思わないほうがいいんじゃないかな。ひきこもりや家庭内暴力の原因がすべて親という気はありません。子供自身の甘えからくる八つ当たりのケースもあります。でも、中受時の過度の誘導や教育虐待が数年たって表に出るケースは少なくないですよね。
3)子供の前で平気で低偏差値校を馬鹿にする
多いです、こういうお母さん。
子供の聞いてる前で「〇〇は出口が悪いから問題外(笑)」と笑い飛ばしたりする。
いや、あなたのお子さんはそこが適正校ですが、と言いたい。
そういう言葉を聞かされて育った子もまた、平気で塾のクラスメイトを馬鹿にする。その子たちのせいで勉強できないと言い訳する。いや、君もそのクラスやで?
不思議と、「〇〇未満はろくでもないクソ学校」と言い放つ親(本当にいます。大げさじゃないです。カテキョの顔合わせで真顔で言われたこともあります)、そういう親に限って〇〇出てるわけじゃないんだよな。それどころか、偏差値にしてギャップ20以上あったりする。あれは何なんだろう。コンプレックス?ルサンチマン?
「小学校では塾の話禁止」という学校は多いようですが、その理由って、こういうマウント合戦が学級崩壊を招いているからなんですよね。「狂気の母」は「小学校の先生は塾に嫉妬している」とか明後日のこと言ってますけど。
4)「撤退」の二文字がない
日本人は、すぐ「まるで旧日本軍のようだ」と引き合いに出しますよね。まさに、今の五輪とか。五輪の可否は私にはわかりませんが、一度始めたことを間違っていると思ってもやめられないのは、たしかに日本人の国民性なのかもしれません。
で、そっくりなんですよ、「狂気の母」たちは。
「〇〇校から志望校落としたら我が子は終わり」「中受やめたら将来はない」と思い込んで、子供がおかしくなっても突き進む。そんなこと言ったら公立に進む8割の小学生は12歳で人生終わりってことですよね(笑)。怒るでほんま。ちょっとデータ見たらそんなことはすぐわかるのに、なぜそこまで思い詰めるんだろう。
ギョーカイに煽られて視野狭窄になっているのか。
受験ギャンブルが楽しくてやめられなくなっているのか。
「誰か」を見返したくてたまらないのか。
5)「DNAという武器」を持たずに戦場に駆り出される子供たち
すべてが遺伝ではありません。でも、逆に言うと半分は遺伝です。
自分が運動音痴だったら、子供に「何が何でもオリンピックに行け」とはなりませんよね?子供が熱望すればもちろん支援するでしょうけれども。
どうして勉強だけは「努力すればなんとかなる」って思うんだろう?
子供にしてみたら「頭の回転の速さというDNA」をプレゼントされていないのに、それを持ってる子に努力で張り合えって言われても無理ゲーだわ。すなわち教育虐待。
学歴がそのまま遺伝すると言いたいわけではないです。うちの親は高卒だし。だから我が親は、「勉強しろ」「どこそこに行け」とは一度も言ったことがないです。自分にできないことを子供に強いてはならないと思っていたんでしょうね。
子は親の鏡。
やっぱり「とっちらかってる子」の親御さんは話が長くて要領を得ないことが多いし、「態度がなってない子」の親御さんは常識がないことが多いですね。
子供の「できの悪さ」を嘆く前に、「12歳の自分に戻って」子供が解いている過去問解いてみるといいんじゃないかな。
6)偏差値がすべての尺度
校風も何もかも無視して、少しでも偏差値の良い学校を目指させる親。まさに狂気。
中受が「ゲームのあがり」ならまだわかるけど、文字通り通過点でしかない。それが証拠に、開成が全員東大行くわけじゃないし、その逆もしかり。「入口」なんて誤差です、誤差。せっかくお金かけて私立に行くなら、偏差値以外の尺度の方がよほど重要。偏差値至上主義の「狂気の母」は、まあたいていは超チャレンジ校を志望してますからあまりないケースですけど、もし子供が伸びてきてそこに到達しそうになるとさらに目標上げたりしますね。志望理由とはなんだったのかと。
逆に、俗にいう「もったいない」と第三者がいうような学校に何度も足を運び、自分の目で確かめて「ここなら」という志望校の決め方をする賢いお母さまもいらっしゃいます。そういう親子にとっては受験は楽しい経験になるようです。
7)子供は競馬馬じゃない
のめりこむ「狂気の母」って、ダービー気分なのかな。
課金や親ターボで「ゲタ履かせられるように思える」のって中受までだもんね。
それは受験業界が見せたまやかしだけどね。
中学高校ともなると、受験勉強見れる親はあまりいないでしょうし、子供もきっぱり「他者」になりますからね。小学生なら「なんとかできる」と思っちゃうのかな。
それって競馬馬の育成に似てますよね。
でも、競馬ほど血統が重視されるゲームもありませんが。
競馬馬はもし潰してしまったら別の馬に乗り換えられる(私はそういうの好きじゃありませんけども)。でも、子供はただ一人。取り換えが効きませんよ。
8)いろいろ言ったけど
保身っぽいですが、私は中学受験そのものを否定しているわけではありません。
子供自身が「勉強大好き!」「すごいヤツと出会ってみたい!」と心底思っている(親に言わされている、のは言語道断)のなら、大いにやったらいい。それはオリンピック目指すのとなんら変わらないんだから。
「狂気の母」が子供の言葉尻をとらえて追い詰めるさまをン十年と見てきて、危惧しているだけです。