とある講師のホンネ

フリーの講師。国・数・英・理を指導中。東大卒。現在は家庭教師中心ですが、大人の文章教室なども開いています。

高校受験のススメ~「内申」ってそんなに怖い?

都内に限った話ですが、中学受験は過熱の一方です。

小学校低学年からの通塾は、リスクのほうが大きいと思っています。

詳しくは過去記事をどうぞ。

 

mikoto2020.hatenablog.com

 

mikoto2020.hatenablog.com

 

で、そもそもなんでこんなに都内中受が過熱しているのか。

原因は、大きく3つのようですね。

 1)と2)については、多少わかる部分もあるのですが、3)については大いに疑問があります。「二月の勝者」のウソです。今回は、1)と2)について述べつつ、3)のリスクについて書きたいと思います。


1)公立小中の授業が退屈すぎるからもっと速く進めたい

お気持ちは、わかります。

ですが、はっきり申し上げて、それを言っていいのは「御三家に楽々受かる層」です。

 

塾に通って机上の知識を得、小学校の授業に対して「それ知ってるよ、馬鹿らしい」と言う小学生の多くが、東西南北を知らなかったり、食塩水の濃度が120パーセントだと答えたり、雨の日は洗濯物が乾きにくいことを知らなかったり、電車の時速が1200キロだと答えたりします(苦笑

 

小学校の授業は、たしかに「カンタン」かもしれません。

 

でも、それを馬鹿にする小学生の多くは「テキストの上での勉強」で進んでいるだけです。小学校が「遅い」のは、「下に合わせている」だけではありません。「わかったつもり」の子たちにも、実体験を通じて理解してほしいという狙いがあります。

公立小がカンタンすぎると言っても、それこそ「ペーパーテストだけ」のケースが多いのです。学問は、速ければいいということではありません。

 

あなたのお子さんは、本当に「小学校の授業は簡単だと馬鹿にできる」のでしょうか?

 

2)「できる子」が抜けたカスカスの公立中なんて行かせたくない

これは、学区によるでしょうね。

たしかに、学区が荒れていて、それを嫌がるご家庭はほとんど中受して私立に抜けてしまう学区なら、わかる気もしますが。

でも、経験上、東京都内とて、「荒れていない学区」では、日比谷や西に行ける学力があっても普通に公立中に進学する子は山ほどいます。

「公立中は荒れている!」と喧伝するのは、それで「得をする」人たちです。

私立中、そして中受関係者。

疑心暗鬼にならず、学区の公立中学を見直してからでも遅くはないのではないでしょうか。

 

また、教育掲示板などで「公立中はまるで魔窟」のように言う人たちって「私立に行かせた親」なんですよね。自分の選んだ道が間違いだと思いたくないからなんでしょうけれども。

公立中→公立高→難関大学は全然ありなルートです。

ご自分が私立ルートを選んだのはご自由ですが、選ばなかったルートをくさすのはやめてほしいところですね。

 

3)公立中の内申システムがクソ!

内申システム、ものすごく評判悪いですね(苦笑

でも、以前も書きましたが、「うちの子は不当に内申を悪くされている!」というケースを精査したら「提出物を出さない」が筆頭でしたよ(苦笑)。

 

そして、たしかに都立高受験において、内申点は無視できない比重がありますが、さりとて「当日点」で挽回不可能では全くありません。

 

副教科に関しても、決して「芸術点」だけで評価しているわけではありません。歌が下手でも音楽の授業を真剣に受け、試験も頑張れば少なくとも「4」は取れます。

つまり、公立中は「当たり前のことを当たり前にやっていれば」高校受験において不利と言えるほどの内申点はつけられません。

 

私、不思議なんですよね。

 

公立中の内申システムをクソクソ言うけど、じゃあ「私立中高一貫校における評定点」はそんなにフェアなんですか?

 

私は中高一貫校の生徒のサポートも長くやってきております。教え子たちに対して、それこそ首をひねるような評定が多々ありましたが。

 

「腕一本」すなわち本番勝負で大学受験するなら内部評定なんて気にする必要ありませんが、多くの中高一貫校では「指定校推薦」「内部進学」狙いのお子さんも多いです。

公立中で内申点気にするのは嫌なのに、中高一貫校で指定校推薦や内部進学のために評定気にするのは平気? ごめんなさい、私には意味がわかりません。

 

おまけ)公立中→高校受験の大いなるメリット

一番でかいのは、「中受算数をやらなくていい」という点です。

 

mikoto2020.hatenablog.com

 過去記事でも書きましたが、「中受算数」は非常に特殊です。

たしかに面白いんですけど、そんなアクロバティックな解き方しなくても、「数学」で十分解けます。「中受算数」に小4~6の3年間「浪費」させるくらいなら、中学数学やったほうがいいです。

 

さらに、他3教科も最近はひどいですね。

サピックスの7月の組み分けテストの現代文、あれ、大学のゼミで教科書に使ってる文章ですよ(苦笑)。

理科はもうどこも高校化学や高校物理出してきてますしね。

 

いや、いいんですよ別に。

1)で書いたように、それらがスラスラとわかる子は「飛び級」的に御三家行けばいいんです。問題は、それらを「理解する力がない子」たちに塾で詰め込み無理な中学受験をさせているところなんです。
そんなアホなことをしなくても、子供たちは身体と脳の成長に合わせて、中学3年間で十分に高校受験に立ち向かえる力が育ちます。

 

また、中高一貫校は「中だるみ」します。

6・3・3・4の日本のシステムってよくできていると感じますね。

やっぱり、人間って3年に一度くらい「締め切り」がこないと頑張れないんですよ。

内申恐るるに足らず、公立中で揉まれつつ、高校受験突破、大学受験突破していってほしいですね。楽しいですよ、3年に一度「試験」があるのは。

 

「二月の勝者」のウソについては過去にも書いていますが、「2月1日の一発点で通るからフェア」は完全にウソです。彼らはその後6年間、「評定点取り」に汲々とします。結局、公立の「内申点」と同じなんです。肩たたきや放校がある分、中高一貫の方がシビアとも言えますね。

 

というわけで、高校受験、胸を張って頑張っていきましょう!